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カンキツの育種を高効率化できる技術を開発―多胚性を制御する遺伝子を特定しDNAマーカー開発:農業・食品産業技術総合研究機構

(2019年4月25日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は4月25日、多くの手間と時間がかかっているカンキツの育種を高効率化できる技術を開発したと発表した。果実の結実を待つまでもなく、芽生えの段階で「多胚性」と呼ばれる性質を識別できるDNAマーカーを開発したもので、これを用いて多胚性の個体を除去することにより、優れた特性を持つ新品種を効率的に作れるという。

 植物の種子は通常、種子親と花粉親両親の遺伝子を引き継いだ交雑胚一つのみを含むが、カンキツでは、交雑胚だけでなく種子親と同一のゲノムを持つ、いわゆる種子親のクローンの胚を多数含む多胚性という現象が見られる。

 多胚性の種子を播いても、両親から遺伝子を引き継いだ交雑胚個体はほぼ得られないため、カンキツの交雑育種では多胚性を示さない単胚性の個体の利用が不可欠とされている。しかし、個体の胚性を確認するには果実の結実を待つ必要があり時間がかかる。

 研究グループは今回、多胚性の制御に関わっている遺伝子を探索し、CitRKD1(シトアールケーディーワン)という遺伝子を特定した。CitRKD1の発現を抑制させると単胚性の種子が得られ、この種子から生育した個体は種子親とは異なるゲノムを持っていたことから、CitRKD1が多胚性を制御する遺伝子であることが確認された。

 そこで、この遺伝子のゲノム構造の特長に基づき、多胚性を示す遺伝子型と単胚性を示す遺伝子型を容易に区別できるDNAマーカーを開発した。

 国内で育成された95種類に及ぶカンキツの品種や系統を調査したところ、CitRKD1の遺伝子型と胚性は完全に一致、開発したマーカーは幅広いカンキツにおける胚性の識別に利用できることが示されたという。