分子のすき間のサイズ精密に計測可能に―打ち込んだ陽電子の寿命測定をデジタル化し実現:産業技術総合研究所ほか
(2019年5月8日発表)
(国)産業技術総合研究所と(株)テクノエーピーは5月8日、機能性薄膜材料の性能の決め手となる「分子のすき間」のサイズを精密に評価できる高速計測技術を開発したと発表した。低エネルギー陽電子ビームを用いるすき間サイズ評価法をアナログ式からデジタル信号処理に置き換え、精度・信頼性などを向上させた。各種機能性材料の開発への貢献が期待されるという。
薄膜に陽電子を打ち込むと、電子の反粒子である陽電子は周りの電子と対で消滅して光を発生する。この光をキャッチして陽電子が消滅するまでの時間を測ると、陽電子の平均寿命から、分子の通り道となる薄膜中の空間の大きさを評価できる。
この陽電子寿命計測に従来はアナログの電子回路を用いていたため、検出信号の数え落としや検出信号の寿命への変換のバラツキなどがあり、その改善が課題となっていた。
研究グループは、陽電子を打ち込むタイミングを決める数十メガヘルツの信号と、打ち込んだ陽電子が消滅した時の信号をそれぞれ数え落としなくデジタル化したうえで、多数のタイミング信号の中から一つの陽電子の発生と消滅の組み合わせを高速に判定し、組み合わせを正しく選別する論理集積回路を新たに設計した。また、平均寿命を求めるソフトを開発するなどし、一連の陽電子寿命測定をワンタッチで計測できるシステムを作製した。
テクノエーピーは今回開発した技術を用いた計測システムを5月から受注販売するという。