少量生産システムで宇宙用集積回路の製造に初めて成功―大規模大量生産とは異なる生産・プロセス技術を開発し実現:宇宙航空研究開発機構ほか
(2019年5月10日発表)
(国)宇宙航空研究開発機構と(国)産業技術総合研究所の共同研究グループは5月10日、人工衛星などに用いられる宇宙用集積回路の少量生産システム(ミニマルファブ)を構築し、集積回路の製造と動作の実証に成功したと発表した。ミニマルファブによる集積回路の製造は世界で初めてで、今後デバイス製造の実用化を目指すとしている。
一般の集積回路は、大面積のウエハーを用いて大規模な大量生産設備で作られている。これに対し、宇宙用の集積回路は需要量が少なく特殊な性能などが求められるため、量産設備による製造には向いておらず、コスト的にも無駄が多い。
研究グループは今回、メガファブとも呼ばれる既存の大規模な生産プロセス・設備とは異なる少量生産に特化したミニマルファブを構築し、小面積ウエハーを用い、トランジスタ1,000個程度の小規模集積回路を実際に製造した。
このミニマルファブは完全自動化で全製造装置群を操作でき、回路の設計者本人が1人で集積回路を作製し完成させることができる。プロセス情報はすべて電子データ化し各装置の一連の動作手順として電子的に格納されているため、操作者はプロセス情報を一切把握する必要はなく、スタートボタンを押すだけでプロセスを完遂できる。
また、装置の動作を通常より約10倍高速化し、ユーザーインターフェースを全装置で統一、クリーンルームを無くし、局所クリーン化してクリーンウエアの着用も不要とした。
ミニマルファブで宇宙用集積回路が作れることを実証したのはこれが世界で初めてで、今後宇宙デバイス製造での活用や応用展開が期待されるとしている。