認知症の予防に海馬の機能上げて記憶能力高める―天然の色素「アスタキサンチン」と軽い運動の併用で:筑波大学ほか
(2019年5月14日発表)
筑波大学は5月14日、天然色素の一種「アスタキサンチン」の摂取と軽い運動とを併せて行うと脳の中の海馬(かいば)の機能がアップして記憶能力が高まることが分かったと発表した。マウスで得た成果だが、認知症の予防に役立つことが期待される。
厚生労働省の推計によると、認知症を患っている65歳以上の人は2015年時点で約520万人。2025年には700万人に達し、65歳以上の人口の約20%を占めるようになると心配され、予防を如何にして図るかが課題になっている。
今回の研究は、筑波大体育系ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センターの征矢英昭(そや ひであき)教授らと米国のロックフェラー大学、(国)産業技術総合研究所の研究者が共同で行った。
アスタキサンチンは、サケやエビ、カニなどに多く含まれている赤い色素。現在では、藻の一種を培養する方法によって日本の企業が量産している。また、高い抗酸化力を持っているとされ、健康食品やサプリメント、化粧品など様々な分野に使われている。
一方、運動も体力の維持・増進だけでなく人の大脳の奥にある小指より小さな記憶を担う器官の海馬に有益な効果を示すことが征矢教授らの研究によって分かり、運動が認知症の予防策の一つとして注目されるようになってきている。
征矢教授らは、アスタキサンチンの摂取と軽い運動とを併用してそれぞれを単独で行った場合と効果がどう違うかを調べた。
実験はマウスに4週間にわたり低強度運動をさせながらアスタキサンチンを0.5%混ぜた餌を食べさせ続け海馬で作られる神経細胞の変化や記憶能力の変化を調べた。
その結果、アスタキサンチンと軽運動を併用すると記憶能力の向上がそれぞれ単独の場合の1.3倍近くになると共に、海馬内にホルモンの一種レプチンが増えることが分かった。
レプチンは、体内の脂肪細胞で作られる肥満を抑えるホルモンとして知られるが、アルツハイマー病を改善する機能があるとすることがいわれている。
研究グループは、「認知機能低下の防止に向け、運動と抗酸化成分摂取を組み合わせた新たな介入プログラム開発に発展することが期待される」とコメントしている。