丈夫で開閉可能なたんぱく質ケージを作製―薬剤輸送用カプセルの開発などに寄与:筑波大学ほか
(2019年5月17日発表)
筑波大学、大阪大学とポーランドのヤギェウォ大学の共同研究グループは5月17日、網かごのような形状をしたたんぱく質を開発し、その構造が特異な正多面体形状であることを解明したと発表した。薬剤輸送用カプセルの開発などに繋がる成果という。
開発したのは、たんぱく質から成る天然には存在しない閉じた網かご状の構造をした、ナノレベルの微小なケージ状物質。近年ドラッグデリバリーなどへの応用を目指してたんぱく質ケージの作製が試みられているが、作製に適したたんぱく質を見出すことは難しく、またたんぱく質が形成するネットワークは複雑で、その構造を把握しにくいなどの問題があり、これらの解決が課題とされていた。
研究グループは今回、TRAPと呼ばれるリング状の11量体を形成するたんぱく質のブロックに着目し、これを利用、金原子1個をホッチキス役とし、たんぱく質ブロックをこのホッチキスで留めることによってケージを作り出すことに成功した。
できたケージのサイズは直径22nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)で、最新鋭のクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析でその構造を調べたところ、非常に特異な、11回対称をした形状の正多面体を形成していることが分かった。
このゲージは加熱や変性剤にも強い反面、還元剤を加えるとバラバラになる。このように、丈夫で安定にもかかわらず閉じたり開いたりできるケージはこれまでないという。
さらに、このケージには右手と左手のような鏡像の関係にある2種類の会合様式が存在し、それらが1:1の割合で作られることも分かった。
ケージを開閉できることはカプセル開発の基盤となるもので、応用開発に向けた今後の研究が期待されるとしている。