ミリ波回路の高精度回路計測技術を開発―次世代移動通信「5G」に使える:産業技術総合研究所
( 2019年5月17日発表)
(国)産業技術総合研究所は5月17日、次世代移動通信の電波として注目されているミリ波の伝送回路の性能を高い精度で調べることができる回路計測技術を開発したと発表した。
電波の中の30GHz(1GHzは10億Hz)から300 GHzまでの高周波をミリ波といい、レーダーや電波望遠鏡などに使われてきたが、大容量のデータを高速で送れる。
このため、次世代の移動通信「5G(第5世代移動通信システム)」へのミリ波利用が内外で検討され、米国のカリフォルニア大学は5Gより高周波の電波を用いる6Gの検討を既に進めていると産総研はいっている。
こうした動きに伴い、ミリ波帯デバイスの性能が向上しており、その回路特性を評価する技術の重要性が増している。
産総研は、いわば新聞や雑誌を刷るように印刷技術でミリ波帯の高周波デバイスやセンサーを作る「プリンテッドエレクトロニクス技術」の研究開発に取り組んでおり、その一環で作った回路(コプレーナ導波路)の300 GHzを超える高周波領域での伝送特性を今回開発した新技術を使い再現性良く高精度で評価することに成功した。これまで300 GHzでの特性の評価は難しかった。
一般にデバイスや回路の測定には、探針(プローブ)を接触させる方法が使われる。しかし、高周波領域のコプレーナ導波路の反射特性、伝送特性の実証では、針先幅が10㎛(マイクロメートル、1㎛は100万分の1m)以下という微細なプローブを幅が50㎛以下の微小な測定端子に接触させないとならず、プローブの接触圧力や位置が少しでもくるうと測定結果に違いが生じ、その影響は周波数が高くなるほど大きくなる。
このため、プローブを再現性良く接触できる制御技術が求められている。
新技術は、その接触位置の制御を従来のような顕微鏡などで視認して行うのではなくコンピューター制御により1㎛毎というようなレベルで行えるようにしてミリ波の回路に使えるようにした。
産総研では、印刷技術で作ったコプレーナ導波路について340GHzまでの評価を行なっているが、さらなる高周波化を目指し500GHzへの適用範囲拡大を検討するとしている。