安定な単一分子素子の作成可能に―分子素子による超微細電子回路の開発に道:東京工業大学/筑波大学
(2019年5月23日発表)
東京工業大学と筑波大学の共同研究グループは5月23日、高分子を用いて安定な単一分子素子を再現性良く作れる技術を開発したと発表した。単一分子素子による超微細な電子回路の実現に向け、今後の開発が期待されるとしている。
現在の電子回路は、主にシリコン単結晶の基板上に各種の素子を汲み上げて構成されているが、さらなる高集積化や微細化など、今後の性能向上を図る方策の一つとして、単一の分子を素子化し、それによって電子回路を構成する、いわゆる分子エレクトロニクスが研究されている。
ただ、これまでの単一分子素子は形成確率が低く破断しやすいなど、極めて安定性が低いという欠点があり、その克服が課題とされていた。
研究グループは今回、ある種の高分子を利用して安定な構造を作ることにより、素子の保持時間と再現率を大幅に高めることに成功した。この二つの性能向上で、従来の技術よりも素子の安定性は21倍と、飛躍的に高まった。また、単一分子素子を流れる電流のノイズ量は従来よりも40%低減し、電気信号を伝達するうえで重要な性能向上がみられたという。
単一分子素子を高い信頼性で形成できることを示した今回の成果は、分子エレクトロニクスの実現に現実的な道筋を与えるものであるとしている。