細胞増殖の最適な培地条件を機械学習で判定可能に―iPS細胞の安定した培養などへの応用に期待:筑波大学
(2019年5月23日発表)
筑波大学の研究グループは5月23日、細菌や細胞の増殖を決定づける培地成分の分析にAI手法の機械学習を導入し、増殖の決定要因の判定や予測に成功したと発表した。この手法を用いると培地条件を最適化でき、細菌や細胞の増殖の適切な制御が期待できるという。
細胞培養では細胞が置かれた培地の条件によって増殖の速度や最終的な増殖個体数が変わる。培地条件の決定は主に経験的に行われているが、条件の微妙な差異によって結果が大きく異なったり再現性が低かったりし、条件の最適化が課題とされていた。
研究グループは今回、増殖を決定づける培地の条件を機械学習で分析する手法を構築し、培地条件の判定・予測を試みた。
具体的には、13の培地成分(化学物質)の組み合わせから成る225種類の培地条件を設定し、実際に細菌(大腸菌)を培養して計1,336件にのぼる増殖のデータを網羅的に取得した。得られたデータから各培地条件における増殖速度および最終的個体数を算出、培地条件と増殖結果を対応付けてコンピュータに機械学習させ、増殖を左右する決定的な要因を推定できるようにした。
細菌の増殖を決定づける培地成分の分析にデータサイエンスのアプローチを試みたのはこれが世界でも初めてという。適用実験の結果、従来の微生物学の常識とは全く異なり、細胞増殖の最重要因子は炭素源ではなく、窒素源や金属イオンであることが示された。また、予測された増殖の決定因子が、異なるメカニズムで細胞内に働くことも示唆されたという。
今回の成果は、iPS細胞の安定した培養などに応用することが期待されるとしている。