モントリオール議定書規制のフロンが中国東部で大量放出―新規製造の可能性、大気観測データ解析で判明:国立環境研究所ほか
(2019年5月23日発表)
オゾン層保護のための「モントリオール議定書」で規制の対象となり、2010年までに全廃したはずのフロンが中国東部で大量放出されているとの研究結果を、(国)国立環境研究所などの国際研究チームが発表した。同議定書に違反して新たに製造されている可能性が高いという。
フロン類は断熱材用の発泡剤や空調の冷媒などに使われていたが、モントリオール議定書(1989年発効)で生産・消費が規制された。規制対象のうち「クロロフルオロカーボン(CFC)」は、2010年までに途上国も含めて全廃されたはずだったが、CFCの一種「トリクロロフルオロメタン(CFC-11)」が東アジアで新たに製造されている可能性が最近の研究で指摘されていた。
チームは、CFC-11を観測している韓国のGosanステーション(済州島)と日本・沖縄の波照間ステーションの観測データを利用して放出量を解析。大気輸送モデルを使い、観測結果からその原因となる放出量の地域分布を推定した。
その結果、中国東部で2013年年ごろから放出量が上昇し、2014~2017年の年平均放出量は2008~2012年の平均より約7,000t増えたことが分かった。増加量は地球全体の放出量増加分の少なくとも40~60%に相当するという。また、中国東部の中でも、主に北東部に位置する山東省と河北省で放出量が増加していた。
CFC-11は2010年以前に製造された断熱材などから漏れることもあるが、放出量は使用中の製品からすべて漏れたと想定した量よりも多かった。CFC-11の市中存在量を過小に見積もっていたとしても、2013年以降に急に漏出が増加したとは考えにくく、新たに製造・使用されている可能性が高いという。
CFC-11放出については、昨年のモントリオール議定書第30回締約国会合で、専門家パネルに放出状況は発生源に関する調査・報告を求める決定が採択された。チームは「今回の研究成果が、議定書の下での調査の一助となることが期待される」としている。