アレルギーを発症させる肥満細胞から発症抑制作用を発見―アレルギー疾患の革新的な治療法の開発に朗報:筑波大学
(2019年5月30日発表)
筑波大学の研究グループは5月30日、アレルギーの発症に関わっている肥満細胞が、アレルギーの発症を抑える働きもしていることを見出したと発表した。肥満細胞のこのアレルギー抑制作用を増強する薬を開発すれば、アレルギー疾患の革新的な治療につながることが期待されるとしている。
アレルギー反応はアレルギーの原因となる抗原と、IgEと呼ばれる免疫抗体が結合し、これが全身に分布する肥満細胞上のIgE受容体に結合することによって引き起こされる。抗原とIgE受容体とのこの結合が起こると、肥満細胞は活性化し、炎症反応を誘導するヒスタミンを代表とする種々の化学物質が肥満細胞から放出され、アレルギー症状が出現する。
アレルギー性疾患には花粉症、喘息(ぜんそく)、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど各種あるが、アレルギー発症のこのメカニズムはどの疾患にも共通する基本的な仕組みである。アレルギーに対してはこれまでヒスタミンの働きを抑える薬剤を中心として治療がなされてきたが、対症療法の域を出ないため効果は限定されていた。
研究グループは今回、肥満細胞にはアレルギーを誘導する化学物質を放出する機能だけではなく、化学物質の放出を自律的に抑制し、アレルギー症状を終結させる仕組みも備わっていることを見出した。
そのメカニズムの一つとして、研究グループはまず、死細胞に特徴的なフォスファチジルセリンというリン脂質の細胞膜上への出現が、生きている肥満細胞でも見られることを発見した。次に、このフォスファチジルセリンは、肥満細胞の細胞膜上にあるCD300aというたんぱく質分子と結合し、アレルギーを誘導する化学物質の肥満細胞からの放出を抑えることを見出した。
つまり、アレルギーの原因細胞である肥満細胞は自らを制御し、アレルギーを抑える仕組みを持っていることが明らかになった。また、重篤(じゅうとく)な全身性アレルギーの一種であるアナフィラキシーを、フォスファチジルセリンと結合したCD300aが抑制することも見出した。
これらの結果から、CD300aの働きを増強する薬剤の開発がアレルギー疾患の革新的な治療につながると期待されるとしている。