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衝撃波による金属材料内部の変化を直接観察―高速破壊の過程を理解し、より硬い材料作りに役立てる:高エネルギー加速器研究機構ほか

(2019年5月23日発表)

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所と熊本大学パルスパワー科学研究所などの研究グループは5月23日、衝撃波を受けた金属内で起きる高速破壊現象の瞬間を直接観察することに成功したと発表した。この成果によって、より強靭(きょうじん)な材料の開発や加工などの応用に繋がるものと期待している。自治医科大学医学部、東京工業大学科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所、テクニコン-イスラエル工科大学、筑波大学生命環境科学研究所との共同研究による。
 衝撃波は空気の圧力が不連続の波として伝わる現象。物体が空気中で音速より早く動いた時などに発生する。火山の噴火や超音速飛行中の飛行機などによっても生じる。
 特に衝撃波は、毎秒1Km以上の高速で物体に伝わり、材料の内部を不均一で、複雑な状態に破壊してしまうことが多い。これまでは破壊前の姿と破壊後の状態を見比べて、この間に何が起きたかを想像するしか方法がなかった。
 研究グループは、衝撃波によって純アルミニウム箔内の結晶組織がどう破壊され、微細化するかに注目し、その過程を精密に調べることにした。
 KEKの放射光実験施設で得られるのは、原子サイズ(約1億分の1m)の極めて狭い波長と、100ピコ秒(100億分の1秒レベル)の短い幅を持つ不連続なパルス状のX線の光源だ。金属組織が壊され急速に微細化されていく様子を、短い時間ごとに精密に調べることができる。
 また、ナノ秒(10億分の1秒)のパルス幅を持つ高強度レーザーを組み合わせた実験を考案。レーザーは1回の光を当てただけで資料表面のコート材を吹き飛ばし、5万気圧以上の高圧衝撃波を発生させ、穴を開けることができる。
 まず破壊前の試料のX線回折像を撮影しておく。パルスレーザーを当てた8ナノ秒(10億分の8秒)間にタイミングを合わせて、その10分の1ほど短いX線パルスを1回照射し、衝撃波が伝わる間に衝撃破壊を始めた試料のX線回折像を撮影した。
 試料を替え、X線パルスの照射のタイミングを3ナノ秒ずつずらして繰り返し測定を続け、計100組の回折像を得た。破壊前と破壊中の回折像の各回折点を照らし合わせると、金属結晶が微細化していることや金属原子の配置が粒子内でどれだけずれているかが分かった。
 この観察でマイクロメートルサイズだった金属の結晶粒は、衝撃破壊によってメートルサイズまで細分化していた。さらに極めて小さくなった各金属結晶内部で原子位置のずれが瞬間的に増大していることも分かった。
 衝撃波による金属内部の破壊過程を理解することは、レーザーを照射して局所的に衝撃圧縮をかけ、材料表面を硬くする高度な加工法に応用できるものと期待している。