間伐が林床部の炭素収支に及ぼす影響を評価―林床部の光合成量増加し、森林全体の炭素収支回復に寄与:国立環境研究所
(2019年5月28日発表)
(国)国立環境研究所は5月28日、富士北麓カラマツ人工林の林床部における炭素収支に対する間伐の影響を長期連続観測データに基づいて評価した結果を発表した。間伐で当初森林全体の光合成量は減少するが、林床部における光合成量は間伐で大きく増加し、森林全体での炭素収支の回復を早めていることが示されたという。
環境研は、林床部における二酸化炭素収支の長期観測実験を、山梨県富士吉田市にあるカラマツ人工林を使って2006年から進めてきた。
土壌チャンバーと植物チャンバーと呼ばれる2種類のチャンバーを林床に設置し、土壌チャンバーでは内部に植生を含めず、土壌からのCO2排出量のみを測定するようにし、植物チャンバーでは内部に林床植生を取り込み、林床部全体の呼吸量や林床植物の光合成量、それと、それらを差し引いたCO2の交換量を測定できるようにした。
高さ32mの観測タワーを用い、森林全体の正味のCO2吸収量も観測した。間伐は2014年と15年に行われ、最終的に30%強のカラマツが間伐された。
研究グループは今回、2006年から2017年の12年間における観測データを用いて、間伐が林床部の炭素収支に及ぼす影響を評価した。
その結果、植物成長期間の5月から10月の林床部の地温は間伐の前後で平均0.37℃上昇、光の強さは平均63.1%増加した。これによって、林床植生の光合成量(CO2吸収量)は平均59.5%、林床部の呼吸量(CO2排出量)は平均26.9%増加した。
林床植生の光合成量の増加には間伐による光環境の改善が大きく寄与、呼吸量の増加に関しては、地温の上昇による土壌呼吸の増加に加え、光環境の改善によって林床植生のバイオマスが増加したことが大きな影響要因に挙げられるという。
呼吸量と光合成量を差し引いたCO2の交換量は14.4%の排出量増加であった。林床植生の光合成量が森林全体の光合成量に占める割合は、間伐前が14.2%だったのに対し、間伐後は19.2-24.5%と有意に増加した。
間伐後に林床部で増加した光合成量は、林冠部で減少した光合成量を補填(ほてん)しており、それらが結果的に森林全体での炭素収支の回復を早めていることが明らかになったとしている。