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スピンにより有機分子の電気伝導制御に成功―有機ラジカル1分子で巨大磁気抵抗効果を確認:物質・材料研究機構

(2016年8月18日発表)

(国)物質・材料研究機構は8月18日、ドイツのコンスタンツ大学とハンブルグ大学の研究者らと共同で、1つの有機ラジカル分子を電極間に架橋させ、巨大磁気抵抗効果を確認することに世界で初めて成功したと発表した。有機分子に結合したラジカル基の不対電子スピンによって、有機分子の電気伝導特性を制御できることを示したもので、素子に電子スピンを利用する次世代のスピントロニクスデバイスの開発につながる成果という。

スピントロニクスは電子の電気的性質だけではなく、電子スピンが持つ磁気的性質も併せて利用し、エレクトロニクスを凌駕する超高性能素子を創り出す次世代技術。スピンを利用した論理回路やメモリの創出を目指す研究が活発化している。

研究グループは、伝導電子の持つスピン情報を固体素子の中で散逸することなく伝播できると期待されている有機ラジカル分子を合成し、今回の成果を得た。

合成したのは、オリゴ(p-フェニレンエチニレン)分子にラジカル基(不対電子)を結合させた、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄などの軽元素から成る、金属元素を含まない安定な有機ラジカル分子。これに、MCBJ法という架橋技術を用いて、絶対温度4度(4K)の低温において金ナノ電極間に有機ラジカル分子が1分子だけ架橋した単分子接合を形成した。

これに磁場をかけて電気抵抗を調べたところ、4T(テスラ)の磁場において最大で287%という巨大磁気抵抗効果(磁場印加による電気抵抗の増大)を観測した。ラジカル基が結合していない不対電子スピンの無い有機分子では変化率は2-4%程度だったことから、スピンによって母体分子の電気抵抗をけた違いに大きく変調できることが明らかになった。

今後は巨大磁気抵抗効果が発現するメカニズムなどを解明したいとしている。