樹木の葉で乾燥時に生じる気孔閉鎖のメカニズムを解明―たんぱく質の一種「アクアポリン」が開閉を制御:京都大学/森林総合研究所
(2019年6月5日発表)
京都大学、(国)森林総合研究所などの研究グループは6月5日、樹木は乾燥ストレスを受けると「アクアポリン」というたんぱく質によって葉の気孔の開閉をコントロールして水分の損失を防いでいることが分かったと発表した。地球温暖化が森林に及ぼす影響を予測するモデル作りなどに役立つことが期待される。
樹木は、乾燥ストレスにさらされると葉の気孔を閉じて水分損失を防いでいるが、気孔を閉鎖すると光合成に必要なCO2(二酸化炭素)の取り込みが抑えられてしまう。樹木は、この二律背反することをタイミング良く上手くコントロールして乗り切っているわけで、気孔の開閉がどのようなメカニズムで行われているのかを明らかにすることが求められている。しかし、気孔閉鎖のメカニズムはまだ十分に分かっていない。
研究では、通水性に影響すると考えられる葉の構造と、細胞膜の水透過性を制御する機能を持つ膜たんぱく質アクアポリンに着目して乾燥ストレスによる葉の気孔閉鎖のメカニズム解明に取り組んだ。
アクアポリンは、生体膜の主要たんぱく質の一つで、水の分子を特異的に通す性質を持っていることが知られている。
研究は、日本の一般的な常緑広葉樹のアカガシ、アラカシ、落葉広葉樹のコナラ、クリ、落葉ツル植物のクズの5種類を対象にして、これらの各樹種の葉脈(養分やデンプンを通す通路)の密度、アクアポリン活性の違いを検討する方法によって行なった。
その結果、アクアポリンが気孔の開閉を制御していることが判明、葉脈密度が低い樹種ほどアクアポリンに依存した気孔開閉を行なっていて、乾燥ストレスにアクアポリンが反応すると水分損失が進行する前にすばやく気孔を閉じることが可能になっていることが分かった。
葉脈の密度が高く、葉全体に水を行き渡らせ易い構造を持った樹種は、アクアポリンに依存しない水分コントロールをしていることも分かった。
今後さらに多くの樹種で研究を進めていくとしている。