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温暖化によるブドウの着色不良被害の予測をマップで表示―ブドウ開花期の前倒しや、高温に適した新品種の利用を推奨:農業・食品産業技術総合研究機構

(2019年6月17日発表)

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ブドウ「巨峰」の着色の様子 (左:着色不良、右:正常な着色)
(提供:農研機構果樹茶業研究部門)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は617日、温暖化の影響で「巨峰」や「ピオーネ」など黒色系のブドウの着色不良対策として、被害の発生地域を予測する詳細なマップを作成したと発表した。またハウスなどを使って開花期を早めたり、高温下でも着色が良い新品種を導入したりする温暖化「適応策」を、産地の自治体や農家に活用してもらうよう呼びかけている。

 ブドウは果皮が黒い大粒系の「巨峰」と「ピオーネ」が主力品種で、栽培面積は巨峰が30%、ピオーネが16%12位を占めている。ところが果皮を黒くする色素アントシアニンは高温環境では色づきが悪くなり、「赤熟(う)れ」と呼ばれて商品価値が下がり農家にダメージを与えている。

 果樹は一旦植えると数十年間は植え替えが難しいため、今後の温暖化の進展に備えて長期的な生産計画が求められていた。そこで農研機構は、全国の巨峰栽培における果皮色と気温との関係を1km四方毎に解析した。

 過去20年間(1981年〜2000年)の毎日の平均気温を基に、着色不良が何回起きるかを調べて発生頻度を求め、将来(2030年代〜2050年)どこの地域で着色不良が起きるか予測した。1km四方のメッシュで発生地域を地図化しているため、市町村レベルで被害が確認できる。農研機構のウェブサイトから誰でも入手ができる。

 過去と将来の20年間ずつを比較すると、温暖化の進展によって着色不良の発生地域が大幅に拡大することが分かった。そのための適応策として「無加温ハウス」の利用や、着色しやすい新品種「グロースクローネ」(農研機構が品種登録、露地栽培)を導入することで被害が軽減されることを確かめた。

 ブドウの開花日調整は幾つかの方法がある。暖房装置を使う「加温ハウス」の開花日が最も早く、暖房装置のない対策では「無加温ハウス」、「雨よけ」、「トンネル(簡易被覆)」の順で開花期が早まる。

 無加温ハウスは露地栽培と比べて満開日が2~3週間早くなる。満開日が早められれば着色期を前倒しでき、酷暑期と重なるのを避けられる。

 着色不良は生食用ブドウの被害ばかりか醸造向けの赤ワイン用品種にも影響が出る。またリンゴやかんきつ類など他の果実にも大きな影響を与えることが分かっている。農研機構では様々な果樹の温暖化の影響評価実施し、被害を軽減するための適応策を積極的に進めることにしている。