東アジア各国の温室効果ガスメタンの放出量明らかに―中国が圧倒的に多く、全体の約90%を占める:国立環境研究所ほか
(2019年6月17日発表)
(国)国立環境研究所と(国)海洋研究開発機構の研究グループは6月17日、東アジア地域から大気中に放出されているメタンの量をデータとモデルを積み上げる手法により明らかにしたと発表した。メタンガスは、CO₂(二酸化炭素)より同じ重量当たりの温室効果が強く、さらに大気中の濃度がアップしている。その実情をメタン“放出大国”中国を含む東アジア各国を対象に解析したもので、地球温暖化を防ぐのに役立つことが期待される。
地球温暖化を起こす気体を温室効果ガスと呼び、メタンはその一つ。大気中での寿命は、12年程度と比較的短い。しかし、国立環境研によると産業革命以降大気中のCO₂濃度は約1.4倍に増加したがメタンの方はそれをずっと上回る2.5倍以上になっているという。
そのメタンの発生源は、自然起源と産業活動などの人為起源の2つがあるが、解析は両方について東アジアの日本、中国、韓国、北朝鮮、モンゴル、台湾、香港の7カ国・地域を対象にして実施した。
その結果、東アジア地域のメタンの総放出量は、全世界の約13%を占め、1990年代に年間6,120万tだったものが2012年には同7,800万tへと約30%も増え、2000年から2012年までの平均放出量が同6,731万tであることが分かった。
東アジア地域全体のメタン放出量の自然起源と人為起源の割合は、人為起源が88.8%と多く、その中で最も大きな割合を占めていたのは石炭や天然ガスなどの化石燃料の採掘に伴う放出。農業、埋め立てなど廃棄物、家畜飼育が続いている。
一方、東アジアの国・地域別の2000年から2012年の年平均メタン放出量は、中国からが圧倒的に多く自然起源・人為起源の両方を併せると6,170万tで7カ国・地域全体の約90%に達している。しかも、その6,170万tの内の88.5%が人為起源によるものであるであることが分かった。2位は、日本の191万t。次いで韓国145万t、4位北朝鮮97万t、5位モンゴル75万t、6位台湾37万t、7位香港15万tとなっている。
研究グループは、これらの国別集計結果について「国連の気候変動枠組み条約において報告されている国別値とおおよそ整合している」とし、「パリ協定(温暖化対策の国際ルール)において各国が掲げた排出削減目標の達成状況を把握する上でも、今回のような地域スケールのメタン収支評価は高い有用性を持つ」と語っている。