早生で倒れにくい西日本向けパン用小麦を開発―たんぱく質含量が高く製パン性に優れる:農業・食品産業技術総合研究機構
(2019年6月18日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は6月18日、早生で倒伏しにくく、製パン性に優れるパン用小麦の新品種「はるみずき」を育成したと発表した。西日本地域での栽培に向いており、既に大分県で奨励品種への採用が予定されているという。
西日本地域では、これまでのパン用小麦品種「ニシノカオリ」や「ミナミノカオリ」に替わって、多収で製パン性に優れる「せときらら」の普及が進んでいる。
ただ、「せときらら」は多くの面で優れているとはいえ、子実の収量が多くなるとたんぱく質含量が低下し、製パン性を十分に発揮できないことがあったり、稈長(かんちょう)がやや高いために台風などで倒伏することがあったりし、生産現場からそれらの改良が期待されていた。
そこで農研機構は、短稈(たんかん)の「ミナミノカオリ」と、日本めん用小麦「ふくほのか」に硬質性と製パン性を付与した準同質遺伝子系統を交配したF1に、さらにこの準同質遺伝子系統を一回戻し交配して育成した「はるみずき」を開発した。
「はるみずき」は、成熟期が「せときらら」より2日早い早生で、稈長が短く倒伏に強く、子実のたんぱく質含量が「せときらら」より約1%高いなどの特徴がある。さらに、製パン試験で「せときらら」より作業性に優れ、官能評価の外観と内相の評価点も高く、製パン性に優れていることが認められた。
「はるみずき」を奨励品種に採用予定の大分県では、「ミナミノカオリ」と「ニシノカオリ」が栽培されている800haの畑地が2023年には「はるみずき」の栽培地に換わる予定で、西日本向けのパン用小麦として「はるみずき」の今後の普及が期待されるとしている。