中性脂肪の合成制御スイッチの仕組み解明―腹具合でオンオフ切り替え:筑波大学
(2016年8月19日発表)
筑波大学は8月19日、高血圧の原因ともなる中性脂肪の肝臓内での合成を促進・抑制する遺伝子の仕組みを明らかにしたと発表した。満腹か空腹かで合成をオンオフするスイッチ遺伝子の存在は知られていたが、今回初めてその詳しい働きを解明した。マウスを用いた実験で脂質異常症が改善できることも確認、将来はヒトの肥満解消や動脈硬化などの治療法開発にも道がひらけると期待している。
筑波大医学医療系の矢作直也准教授、武内謙憲助教らの研究グループが解明した。
食事で炭水化物を摂取すると、余分な炭水化物は肝臓で中性脂肪に変えられて体内にエネルギー貯蔵物質として蓄積される。しかし空腹時には中性脂肪は合成されず、食事の状況に応じて合成するかどうかのスイッチの切り替えが行われている。
そのスイッチ役をしているのが転写因子「SREBP-1」と呼ばれるたんぱく質であることは従来から分かっていたが、今回初めてこのスイッチの切り替えに転写因子「KLF15」と呼ばれる他のたんぱく質が重要な役割を果たしていることを突き止めた。
KLF15は空腹時に体内で作られるが、今回の研究でこれが他のたんぱく質と結びついて複合体を作り、スイッチ役のSREBP-1遺伝子の上流に結合してスイッチ役の転写因子「SREBP-1」が作られなくなることがわかった。その結果、空腹時には中性脂肪の合成スイッチがオフになる。反対に食後の満腹時にはKLF15が作られないため、複合体が消失して中性脂肪を合成するスイッチがオンになる仕組みだ。
肥満モデルマウスを用いた実験で肝臓内のKLF15を人為的に増加させたところ、空腹時と同様に中性脂肪合成のスイッチが入らない状態となった。その結果、肥満マウスの高脂血症が改善することがわかった。
研究グループは今後、スイッチの切り替えに重要なKLF15の働きをさらに詳しく解明し、肥満や脂質異常症の治療法開発に役立てたいとしている。