85歳以上の高齢者、約20%が「きこえにくい」状態に―「国民生活基礎調査」のデータ分析し判明:筑波大学ほか
(2019年6月27日発表)
筑波大学と筑波技術大学の共同研究グループは6月27日、85歳以上の高齢者は男女共約20%が「きこえにくい」状態になっていることが「国民生活基礎調査」の回答データを分析した結果分かったと発表した。
世界保健機関(WHO)が、寿命を延ばすだけでなく健康に生活できる期間をいかにして延ばすかが大切、と全世界に向けて「健康寿命」の延長を呼びかけたのは2000年のこと。しかし、「きこえにくい」難聴(なんちょう)の有病率は、日本も世界も増加の傾向にあり、WHOは2015年に行った研究で難聴は「不自由さを持って生きる年数」の第4位に入ると発表している。こうしたことから、米国や英国など諸外国では、高齢者の難聴に関する大規模な検討がなされているが、日本ではまだ行われていない。
今回の研究は、厚生労働省が毎年実施している「国民生活基礎調査」の平成28年版の回答データの2次利用申請を研究グループが行い、同調査に協力した224,641世帯の内自宅で生活する65歳以上の高齢者137,723人の回答データを使って実施した。
具体的には、同調査の「健康票(調査票)」に自覚症状として現在「きこえにくい」状態にあると自己申告した人全員を研究グループが抽出し、難聴につきものの外出活動制限・心理的苦痛・もの忘れ、を調べた。
その結果、平均年齢74.5歳の全分析対象者137,723人の9.0%にあたる12,389人が「きこえにくい」状態にあることが判明、その数は年齢と共に上昇して男女共85歳以上になると約20%の人が「きこえにくい」状態になっていることが分かった。
また、「きこえにくい」と回答し外出活動に制限が生じている85歳以上の人は、男性の場合で40%強、女性では約50%に達し、もの忘れもその数値に近い発生状況になることが分かった。
難聴を持つ高齢者は、家族や友人とのコミュニケーションが難しくなり、外出活動に困難を感じるようになる。また、難聴は、認知症のリスク因子の一つにも挙げられている。
研究グループは「高齢者の難聴が健康寿命に関連する様々な指標に影響を与えている可能性が示唆された」といっている。