干ばつによる世界の穀物被害マップを作成―被害の把握や推定が可能に、国際支援や日本への輸入にも役立つ:農業・食品産業技術総合研究機構
(2019年7月1日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は7月1日、干ばつによる世界の穀物生産被害の地理的分布を明らかにし、マップ化を実現したと発表した。被害量を把握すると共に、今後の被害予測も可能になる。国際支援の対策や、日本の安定的な穀物輸入と需要に役立てたいとしている。
干ばつは世界の安定的な穀物生産を脅かす代表的な原因に挙げられている。最近の温暖化による極端気象によって、世界の干ばつの頻度や穀物被害量の増大が懸念されている。特に開発途上国では農業生産に大きく依存している国が多く、干ばつ対策は急務となっている。
こうした被害を軽減するためには正確な情報把握とその評価が欠かせない。農研機構は降水量と穀物収量データを解析し、世界で初めて50kmメッシュの詳しい穀物生産影響の分布地図を作成した。
国際連合食糧農業機関(FAO)の国別穀物生産量と、アメリカ海洋大気庁(NOAA)のデータから求めた植物総一次生産量を使って、単位面積当たりの穀物生産量を求めた。
その結果、1983年から2009年の27年間に、1回以上の干ばつによって被害を受けた穀物(コムギ、トウモロコシ、コメ、ダイズ)の栽培面積では、世界の4分の3(約4億5,000万ha)が干ばつ被害を受けていた。
この穀物被害量と国別の生産者価格(2005年)から見積もると、27年間の総生産被害額は約1,660億ドル(約17兆9,000億円)に上った。
国際機関や先進国が、干ばつ対策資金を開発途上国などに支援するには、過去の干ばつによる穀物生産被害やその地理的分布についての科学的な根拠が必要になる。これまでは特定の国に限定された被害報告はあるものの、全世界で同じ手法を使って評価した例はなかった。
今後は、気象庁が公表した世界の標準化降水指数(過去30年以上の月別降水量データから求めた少雨の発生頻度を表す統計指数)を活用することによって、干ばつによる穀物被害を監視し、予測できるようになる。これが実現すれば、干ばつの影響を受けやすい国の政府や国際機関に早期警戒を呼びかけて迅速な対応に役立つとみている。