温室効果ガス観測衛星「いぶき2号」の観測データを解析―アジア、アフリカの一部で、メタンガスや一酸化炭素の濃度高く:国立環境研究所
(2019年7月5日発表)
環境省、(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)、(国)国立環境研究所(NIES)は7月5日、3者で共同開発した温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」(GOSAT-2)が取得したメタンと一酸化炭素の濃度分布データを解析し、発表した。湿地や、森林火災の多い東南・南アジア、アフリカ中央部、南米北部ではメタン濃度が高く、化石燃料の使用や森林火災の多い東アジア、アフリカ中央部では一酸化炭素の濃度が高いという特徴が得られた。
「いぶき2号」は2018年10月29日にH-ⅡAロケットで打ち上げられた。地表から600mを超える高度を6日間で一周する。衛星搭載の「雲・エアロゾルセンサー」と「温室効果ガス観測センサー」の2つのセンサーが、今年2月から定常観測に入った。今回はこのうち温室効果ガス観測センサーの解析結果を公表した。
地球に降り注いだ太陽光は、地表面で反射し大気中の温室効果ガスによって吸収され、減衰しながら大気上端に達する。減衰の度合いは、雲やエアロゾル(大気粉塵)などの妨害物質によって、進行方向を変えたり隠されたりする。また太陽光が差し込む方向や衛星が観測する方向によっても変わる。
標高や気圧の影響などを取り除くために、地上から大気上端までを貫く「仮想の円柱」(カラム)を想定し、その中にどのくらいの光があるかを「カラム平均濃度」として変換する。
また大気中の気体分子や雲、エアロゾル(大気粉塵)などの散乱を受けて、光は様々な経路をたどってしまうために「プロキシ法」と呼ばれる手法を使った。
プロキシ法は、気体のカラム平均濃度を出すにあたり、雲やエアロゾルによる散乱の影響を減らす手法の一つ。比較的精度よく平均濃度が得られるが、二酸化炭素には適用できない欠点もある。こうした妨害物質の影響を適切に取り除き、精度よく推定するための方法はまだ確立されていない。
温室効果ガス観測センサーが取得したデータ(2019年3月5日〜4月3日)から、メタンのカラム平均濃度の分布を世界地図化した。メタン排出源である湿地や森林火災の多い東南・南アジア、アフリカ中央部、南米北部で、メタン濃度が高いことがわかる。
同じように、一酸化炭素のカラム平均濃度の分布図を作成した。化石燃料の使用や森林火災などの多い東アジア、アフリカ中央部で濃度が高くなっている。
これらの分布は同時期に観測した欧州の地球観測衛星「Sentinel-5p」に搭載された観測機器「TROPOMI」のデータや、世界各地の地上観測データと概ね一致したことも確認できた。
今後は二酸化炭素のカラム平均濃度の推定や、得られた濃度データの比較検証を進めていく。