恐竜の集団営巣跡発見―アジア最大規模をゴビ砂漠で:筑波大学ほか
(2019年7月10日発表)
テリジノサウルス類恐竜の集団営巣の復元図 (提供:服部雅人)
筑波大学、北海道大学などの研究チームは7月10日、恐竜が集団で卵を守っていたアジア最大規模の集団営巣跡をモンゴルのゴビ砂漠で発見したと発表した。現在の鳥類には集団営巣によって抱卵のための巣を守るという行動がみられるが、今回の発見で集団営巣の起源が抱卵しない恐竜類にまでさかのぼれることが分かったという。
研究チームには筑波大の田中康平助教、北海道大学総合博物館の小林快次教授、兵庫県立人と自然の博物館の久保田克博研究員らのほか、モンゴル、カナダ、韓国の研究者も加わった。
発見したのは、ティラノサウルスなど主に二足歩行をしていた肉食恐竜を多く含む獣脚類の仲間「テリジノサウルス類」の集団営巣跡。研究チームが2011年にゴビ砂漠東部にある約8600万~7200万年前のジャブラント層と呼ばれる白亜紀後期の地層を発掘して見つけた。2018年までに合計15個の巣の化石が見つかり、巣にはそれぞれ直径約13cmの球状の卵3~30個が確認できた。
卵は殻の微細構造などから同一種類の恐竜が産んだものと研究チームはみており、現在のワニ類と同様に地面の熱で温めていたと推測している。15個の巣の内9個では卵に殻を割った穴があるなどふ化した形跡も見つかり、営巣がふ化に結び付いた営巣成功率は60%と高かったと推測している。高い営巣成功率は巣を保護する現在のワニ類や鳥類にも見られるため、テリジノサウルス類も親が巣のそばにいて巣を守っていたと考えている。
研究チームは「現在の鳥類に見られる集団での保護行動は、抱卵行動が進化する以前の恐竜類にまでさかのぼることができる」と判断した。さらにこうした研究を積み重ねることで、恐竜類から鳥類にかけて生態や行動がどのように進化していったのかを明らかにできると期待している。