褐色をした珪藻の色素たんぱく質の立体構造を解明―水中の光エネルギーの利用の仕組み明らかに:岡山大学/筑波大学
(2019年7月30日発表)
岡山大学と筑波大学、理化学研究所などの共同研究グループは7月30日、褐色を呈する珪藻の色彩の元となっている色素たんぱく質の立体構造を解明したと発表した。褐色の光合成生物である珪藻が、水中で限られた光エネルギーをいかに利用しているのか、その仕組みが明らかになり、光合成生物の進化と多様化の謎に迫る成果が得られたとしている。
珪藻をはじめとする水域に生息する藻類やシアノバクテリアといった光合成生物は、陸上の光合成植物とは異なり、それぞれの生活環境に応じて異なる色素たんぱく質を持ち、水深によって届き方が異なる波長成分の太陽光エネルギーを活用している。
珪藻はプランクトンの一種で、その色はFCPと呼ばれる色素たんぱく質によっている。FCPは太陽光のうちの青色から緑色の光を吸収することに優れているが、FCPがどのように光エネルギーを吸収し、その光エネルギーを化学エネルギーに変換する光化学系たんぱく質にいかに伝達しているのか、詳細は不明だった。
研究グループはこの解明を目指して、珪藻から光化学系たんぱく質とFCPとの複合体を精製し、クライオ電子顕微鏡という、液体窒素温度でたんぱく質を観察する電子顕微鏡を用いてこの複合体の立体構造を解析した。
その結果、3.8Å(オングストローム、1Åは1,000万分の1mm)の解像度でたんぱく質複合体の立体構造の解析、決定に成功し、珪藻特有の色素組成とその並び方を解明した。その組成や並び方は、緑色植物由来のものとは大きく異なり、多様性を生み出していることが分かった。
また、色素の並び方から、水中でエネルギーを効率よく利用する仕組みが分かり、光合成生物が多様な環境に応じて効率よく太陽光エネルギーを利用する仕組みを獲得してきたことも分かったという。
今回の研究成果は、太陽光エネルギーの効率的・選択的な利用を目指す人工デバイスの創出へつながる可能性も期待されるという。