痕跡を光らせて、木材の害虫を特定する新手法を開発:森林総合研究所
(2016年8月22日発表)
(国)森林総合研究所は8月22日、建材や木製家具を食い荒らし、その中に潜る害虫の正体を正確につかむ簡単な手法を開発したと発表した。「フラス」と呼ばれる害虫の食べかすや糞の混合物などを、耳かき1杯ほど採って調べるだけ。害虫の種に特有の塩基配列が、試薬で光って知らせてくれる。輸入木材や家具の販売業者の強い味方になりそうだ。
日本の木材輸入量はひと頃より減ったとはいえ、まだ年間5,200㎥以上もあり、国内の木材利用量の70%以上を占めている。年を追うごとに原木・丸太の輸入が減少し、製品や合板、製材用材の輸入が9割を占めるようになった。
木材や木製品の中に小さな穴を掘って食べ進む外来害虫は、なかなか目にすることもなく気付きにくい。侵食が分かってからでは手遅れで、製品価値を落としてしまう。
どんな種類かを突き止めるには、木造の柱や木製家具などを破壊して実物を取り出さないと判断できず、効率的な防除法が求められていた。
森林総研が開発したのは「DNAバーコーディング」と「LAMP法」と呼ばれる手法を組み合わせることで、いずれも害虫特有のDNAの塩基配列を正確に検出する試薬だ。DNAバーコーディングは、あらかじめデータベースに登録された塩基配列をその生物が持っているかどうかで判定し、LAMP法は特有の塩基配列があれば光って知らせてくれるもの。
例えばアフリカヒラタキクイムシとジャワフタトゲナガシンクイは区別のつけにくい近縁種だが、ヒラタキクイムシのDNAに特別に反応する試薬を作っておけば、耳かき1杯程度のフラスからでも特定できることを確認した。
シロアリのように食べたエサによって見分けがつき難くなるものでも、2つの方法を併用することで確実に突き止められる。安価で使いやすいキットを開発できれば、外来害虫対策に大きな効果を上げるとみられる。