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常温乾燥保存できる昆虫細胞で―有用たんぱく質生産に道:農業・食品産業技術総合研究機構

(2019年7月26日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は726日、常温で長期間乾燥保存できる昆虫の細胞に効率よくたんぱく質を作らせる技術を開発したと発表した。干からびても死なないネムリユスリカの細胞内で従来の1,500倍も強力に遺伝子を働かせるスイッチ「プロモーター」を発見、医薬品などの有用たんぱく質づくりへの応用に道をひらいた。昆虫の細胞を利用した効率的な有用物質の生産に役立つと期待している。

 農研機構と(国)理化学研究所、ロシアのカザン大学を中心とする研究グループが、ネムリユスリカのゲノム(全遺伝情報)を研究する過程で見つけた。

 生物の細胞内ではさまざまなたんぱく質が遺伝子の情報に従って作り出されているが、プロモーターは遺伝子を働かせるスイッチ役。昆虫の細胞内で働くプロモーターは既に市販されているが、従来のものはネムリユスリカの培養細胞内ではスイッチ役としてほとんど機能しなかった。

 これに対し今回、ネムリユスリカの細胞内から見つけたプロモーターは、①ネムリユスリカの細胞内から既に見つかっていたものに比べて約800倍、②昆虫細胞用として市販されているものに比べると約1,500倍という強力なたんぱく質合成活性を持っていることが分かった。また、新プロモーターはカイコなど、ネムリユスリカ以外の昆虫の細胞内でもたんぱく質合成スイッチとして効率よく働くため、汎用性の高い昆虫細胞用プロモーターとして利用できることが分かった。

 昆虫の細胞は室温で増殖させられるうえ、二酸化炭素など特別な培養環境を必要とせず、ほ乳動物の細胞に比べると比較的簡単で安価なたんぱく質合成手段になると期待されている。特にネムリユスリカの細胞は乾燥に強く、1年もの長期間にわたって常温で乾燥保存してもの有用たんぱく質づくりに利用できるとされている。

 今回の成果について、研究グループは「“保存”と“合成”が両立する効率的な有用物質生産系の構築に貢献する」と期待している。