発電細菌を利用した豚舎の新しい汚水監視システムを開発―5日間かかったBOD測定を、わずか6時間に短縮できた:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2019年8月6日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構と山形東亜DKK株式会社などは8月6日、水の汚れ具合を表すBOD(生物化学的酸素要求量)を6時間で測定できる新たなシステムを開発したと発表した。これまで5日間もかかっていた測定が画期的に短縮された。排水処理の浄化性能を高め、省エネ運転、ネットを通じた監視システムによる運用が期待できる。
BODは一般に水の汚れの指標として使われる。水質汚濁は主に過剰な有機物の腐敗と酸欠によって起こる。ここで測定するのは有機物そのものではなく、有機物の分解時に消費される酸素の量を測る。
豚舎からの排水中のBOD値は日々変動する。その値に応じて細かい運転調整ができれば省エネになるが、これまではBODの測定結果を得るのに5日間もかかるため不可能だった。
また最近は畜産業に対して窒素の排水基準が強化されており、今年7月には水質汚濁防止法による畜産業の窒素(硝酸性窒素)の暫定排水基準が600mg/Lから500mg/Lに強化された。今後さらに厳しくなるとみられるだけに、短時間での運転調整が急務だった。
水中や土壌中などには、有機物を分解する際に電流を発生する「発電細菌」という微生物群が知られている。これは作用電極に付着して水中の有機物濃度と関連した電流を発生させることから、農研機構はこの発電細菌に注目し、BODを短時間で測定できる新しいセンサーを開発した。
センサーは排水処理施設の曝気槽や最終沈殿槽に設置して、サンプリングから測定、データ送信までを全自動化できる。つくば市の農研機構の構内に設置した小型曝気槽と、熊本県の養豚排水処理施設の曝気槽で試験運転を実施し、上澄み液のBODを6時間で測定できた。
このシステムは排水基準を参考に、BOD値を「それより多い」×(100mg/L以上)、「少ない」◎(50mg/L以下)、「基準付近」○(50〜100mg/L)で評価する。
測定したBODやpH(水素イオン指数)、水温の生データはwebサーバ内に蓄積され、自動的にスマートフォンやパソコンでも監視できる。BODやpHが設定値を超えたときや装置に異常が起きるとメールで知らせるアラート機能がある。
農研機構では2020年度に市販化を予定している。特に養豚業の排水処理施設に設置することで、今後の窒素規制への対応も可能になり、養豚地帯の水環境の改善が進むものと期待している。