極微の磁気渦つくる新物質―高密度記憶への応用も:理化学研究所/物質・材料研究機構ほか
(2019年8月9日発表)
(国)理化学研究所と(国)物質・材料研究機構、高エネルギー加速器研究機構は8月9日、数nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)という極微の磁気渦ができる新しい磁性材料を開発したと発表した。記憶媒体などの高集積化・高検出感度化の実現に役立つ。電子の電気的性質を利用するエレクトロニクスに代わって磁石としての性質を用いる次世代技術「スピントロニクス」への応用につながると期待している。
理研・創発物性科学研究センター強相関物性研究グループの車地崇客員研究員、十倉好紀グループディレクターと、物材研の山崎裕一主任研究員、高エネ研の佐賀山基准教授らの共同研究グループが開発した。
結晶構造を持つ物質中では、極微の棒磁石の性質を示す原子が渦状に配列した磁気スキルミオンと呼ばれる状態を示すことがある。これまでこの渦の大きさは数十~数百nm以下にするのは難しかった。これに対し研究グループは、磁性体によく現れる「磁気フラストレーション」と呼ばれる特殊な現象を利用することで、この渦をより小さくできる可能性があることを見出だした。
そこで、特定方向からの磁場によって磁気フラストレーション状態を示す新物質として、ガドリニウム・パラジウム・ケイ素からなる金属間化合物「Gd2PdSi3」の単結晶に注目、磁気スキルミオン現象が現れて磁気渦ができるかどうかを確かめた。その結果、従来よりも一桁小さい2.5nm程の磁気渦が安定的にできることを確認、さらにこの磁気渦を電気的な信号として取り出すことにも成功した。
そのため研究グループは、磁気フラストレーションを利用した今回の新たな材料設計指針によって「より巨大な電磁気応答を示す磁気スキルミオン物質の発見が期待できる」とみており、新しいスピントロニクス素子への応用につながると期待している。