日本最古の鉱床から新鉱物を発見―約5.3億年前の鉱床で見つけ「日立鉱」と命名:東北大学/海洋研究開発機構ほか
(2019年8月7日発表)
東北大学、(国)海洋研究開発機構などの共同研究グループは8月7日、茨城県日立市にある日本最古の鉱床から新鉱物を発見、これを「日立鉱」と命名したと発表した。既に閉山している日立鉱山にある約5.3億年前に生成されたと見られる「不動滝」と呼ばれる鉱床から見つけた。茨城県で新鉱物が発見されたのは初めて。この成果は、鉱物学分野で最も権威ある英国の学術雑誌「Mineralogical Magazine」に掲載された。
日立市の日立鉱山は、明治時代からの長い歴史を持ち、日本4大銅山の一つとして知られていた。閉山したのは1981年だが、それより前の1970年代に不動滝鉱床の坑道内で鉱石の採取を行っていた学者がいた。岡山大学の加瀬克雄名誉教授で、その際に採取された鉱石から今回、東北大大学院の栗林貴弘准教授、同大総合学術博物館の長瀬敏郎准教授や海洋研究開発機構、九州大、富山大、国立科学博物館の研究者らが共同で日立鉱を見つけ出すことに成功した。
既に日立鉱は、国際鉱物学連合の委員会で審査され、新鉱物であることの承認を2018年6月に得ている
発見された日立鉱は、重金属元素を含んでいて、かつ大きさが最大でも100㎛(マイクロメートル、1㎛は100万分の1m)という極微小サイズだったため実験室での結晶構造の決定が難しかったが、茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構の放射光共同利用施設「フォトンファクトリー」で放射光単結晶X線回折実験を行うことでこの問題をクリア、日立鉱が新しい結晶構造を持つ鉱物であることを証明した。
鉱物は、化学組成をベースに分類されている。日立鉱は、鉛(Pb)と蒼鉛(そうえん)とも呼ばれるビスマス(Bi)、それにテルル(Te)、硫黄(S)の4つの元素を含んでいるPb₅Bi₂Te₂S₆という組成の硫化鉱物で、「硫テルル蒼鉛鉱グループ」に属す。
近年、次世代材料としてトポロジカル絶縁体・超伝導体と呼ばれる新規材料が注目されているが、その有力候補の一つである硫テルル蒼鉛鉱(Bi₂Te₂S)と日立鉱が化学組成、結晶構造の両面で密接に関連していることが分かったと研究グループはいっている。
また、日立鉱山の不動滝鉱床は、海底から隆起した海底熱水鉱床を起源にしていることから研究グループは「海底で形成される熱水鉱床には日立鉱が普遍的に存在すると考えられる」と話している。