地下水の年代測定を省力化する採水法を開発―採水にかかる時間60~70%短縮できる:農業・食品産業技術総合研究機構
(2019年8月29日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は8月29日、地下水の年代測定を省力化する採水法を開発したと発表した。
地下水の年代測定とは、その地下水が雨として降ってから何年たっているかという地下での滞留時間を調べること。地下水は、帯水層と呼ばれる地層に蓄えられ、流れる速さや滞留時間はその地域の地質構造などによって異なる。
農村地域の地下水資源を適切に管理するには、地下水がどこを流れて湧き出すのかという「場所」の情報と共に、どのくらいの滞留時間をかけて流れてきたかといった「時間」の情報を知ることが重要だが、農村地域を流れている地下水の滞留時間は比較的短いといわれている。
そうした若い地下水の年代測定には、地下水中に溶存している六フッ化硫黄(SF₆)を調べる方法が有効で、農研機構は今回その測定に要する時間を大幅に短くできる採水法を開発した。
日本をはじめ北半球の大気中のSF₆濃度は、1965年頃から高くなりだし1980年頃から現在までほぼ直線的に上昇している。
SF₆の濃度を指標とする地下水の年代測定法は、その大気中のSF₆濃度の変化状況を利用して地下水の年代を推定するという方法だが、ボーリングした細い垂直の井戸から試料水を汲み上げるのに現在はポンプを使っている。
それに対し、新開発の採水法は、ポンプを使わずに人間の手で採水器をボーリングした井戸の中に吊り下ろして試料水を採水するというもの。ポンプにつきものの汲み上げることのできる深さの制限がなく、地下深くの地下水でも採取できる。必要なのは井戸用採水器と採水ロープだけなため、機材の簡素化・軽量化で作業労力の軽減、能率の向上が図れ、機材の準備も含めた採水にかかる時間を今より60~70%程度短縮できるという。
農村地域の地下水資源の存在量の把握や、地すべり地の地下水流動状況の把握などへの活用が期待されることから農研機構はこの手法の採水手順などの技術資料をホームページからダウンロードできるようにした。