細胞を生きたまま診断―自ら発する蛍光をAIで画像処理:筑波大学
(2019年8月29日発表)
筑波大学は8月29日、個々の細胞が発する蛍光を生きたまま分析する技術を開発したと発表した。画像処理技術や人工知能(AI)を活用し、多数の細胞集団の中の細胞を個別に見分けてその種類や生理状態、増殖段階などを分析できるようにした。医薬品など有用物質を生産する能力の高い細胞の選抜や、発酵に用いる細胞の健康状態を診断する技術などに応用できると期待している。
生きた細胞はほぼすべてが光を照射されると自ら独自の波長の蛍光を発するという自家蛍光の性質を持っている。筑波大の八幡穣助教と野村暢彦教授らの研究グループはこの点に注目、個々の細胞を生きたまま分析する手法の開発に取り組んだ。
多数の細胞集団の中から個々の細胞を見分けるために、まず超高感度蛍光スペクトル共焦点顕微鏡など特殊な顕微鏡で細胞集団の自家蛍光画像をとらえた。これを特殊な画像処理技術で処理、多数の細胞の自家蛍光を同時に解析した。こうして得た大量の細胞の自家蛍光情報をビッグデータとして蓄積してAIに学習させ、個々の細胞の種類や状態を細部が生きたまま予測できるようにした。
研究グループは「細胞の種の分類や、生理状態(増殖段階)の識別が95%以上の高い精度で予測可能なことが示された」とみている。そのため有用物質を生産する能力の高い細胞の選抜や、発酵に用いる細胞の健康状態をダメージを与えずに分析できるとして、細胞の品質管理技術などに応用できると期待している。