ロボットの自律的な作業を実現するAI技術を開発―学習で部品の上手な取り出し、人をまねて組み立て、視覚情報で迅速に掴む:産業技術総合研究所ほか
(2019年8月29日発表)
(国)産業技術総合研究所人工知能研究センターと大阪大学、中部大学などは、製造現場での複雑な部品供給と組み立て作業にロボットを導入するためのAI(人工知能)技術を開発したと、8月29日に発表した。多品種少量生産が進み、複雑になった生産ラインの設計を効率化し、作業時間を短縮してロボット導入をしやすくするのが狙い。
このところの消費者ニーズの多様化によって、生産現場には従来の大量生産型から、多品種、少量生産に応えるための難しい課題が生じている。産業ロボットにも、従来のような単純な溶接や搬送など同じ工程の繰り返しから、部品供給、製品組み立てまでの複雑な全工程を担わせようとの努力がなされてきた。
こうした総合的で高度、複雑なロボット開発は、一研究所だけで取り組むのは非常に難しい。そこで産業ロボットの実用的なAI技術に優れた実績を持つ産総研と、ロボットの作業計画技術に強みのある大阪大学、商品などを識別するロボットの視覚技術や画像処理を得意とする中部大学がチームを組み、(国)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトとして取り組んだ。
開発の成果は、「絡み合う部品の供給作業をコンピューター・シミュレーションだけで学習させる技術」と「組み立て作業で、人の作業の見まねによる即時教示と道具操作」、「視覚に基づく作業の高速化」の3つで、NEDOのウェブサイトで成果のソフトウエア・データベースの一般公開を開始した。
「部品の供給作業」は、シミュレーションによる深層学習の手法を使い分け、バラ積み状態のたくさんの部品の中から、部品同士が絡みそうな状態を避けて上手に取り出すことを実現した。成功率は90%で、従来の実機を学習させた時と同等だった。研究者の意図する行動をロボットにやらせる教示作業を、これまで1〜2日かけて学習させていたのが、1部品につき5時間程度のシミュレーションによって学習できた。これによって作業時間や人の手間が大幅に削減できる。
「人の作業の見まね」は、カメラの前で人が組み立て作業を実演し、ロボットがすぐに見まね(模倣)して自律的に動く手法を開発した。ドライバーを使ってネジ締めをする作業などは、人が数分の実演をして見せるだけで、ロボット自身が学習しその場で作業させることができた。
「視覚による作業の高速化」は、ロボットの視覚で得た画像の計算処理の時間をいかに短縮し、操作に直結させるかが課題だ。一層効率的な圧縮と復元のできる処理法を開発し、計算時間を3分の1まで短縮できた。今後は3つの技術の各性能を向上すると共に、連動性を高める研究を続ける。