農業用の重ね池の決壊を判定する手法を開発―ハザードマップの作成などに役立つ:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2019年9月9日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構とニタコンサルタント(株)は9月9日、農業用の水源として利用されている重ね池(親子池)の連鎖的な決壊を判定する手法を共同で開発したと発表した。重ね池は、ため池の一つ。それが決壊した時の被害を予測するハザードマップ(被害予測地図)や浸水想定区域図を作成するのに役立つものと期待される。
重ね池は、上流と下流に複数の池を人工的に造成した、ため池のこと。
ため池は、降水量が少なく、大きな河川が近くを流れていない地域などで農業用水を確保する目的で作られてきた。瀬戸内地域をはじめ各地に数多くあり、その数は全国で約17万か所を数え、ため池は無くてはならない農業用水源となっているが、各地で問題になっているのが集中豪雨などによる堤の決壊。平成30年7月の豪雨では多くのため池が決壊、下流域で人が亡くなる二次災害が発生している。
このため、農林水産省は「平成30年7月豪雨を踏まえた今後のため池対策の進め方」を決めており、ため池が地域内にある地方公共団体などはハザードマップや浸水想定区域図を整備することを求められている。
中でも心配されているのが谷筋に造成されている重ね池への対応。上流の上池と呼ばれるため池が決壊するとその氾濫流が下流の下池に流れ込んで下池が連鎖的に決壊するということが起こるが、従来の手法では下池の決壊を判定することが難しかった。
今回の共同研究は、大地震や集中豪雨による重ね池の連鎖的な決壊の発生有無を判定できるようにしようと行った。
研究では、平成16年の台風23号の際に洲本市(兵庫県)の重ね池で発生した上池と下池の連鎖決壊を取り上げて開発した手法の有効性を調べた。洲本市の重ね池連鎖決壊は、上池の決壊で先ず1つめの下池が決壊し、さらにそこから200m余り離れていた2つめの下池が押し寄せる水で決壊するという激しいものだった。研究グループは、その洲本市の事例の解析結果から開発した手法により重ね池の連鎖決壊の有無を判定できることが分かったといっている。
この研究は、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として行った。