ハリセンボンに着想を得て超撥水材料を開発―耐久性に優れ、船底塗装などの構造材料への実用化を目指す:物質・材料研究機構
(2019年9月10日発表)
(国)物質・材料研究機構は、フグ科の魚ハリセンボンのトゲ(鱗)からヒントを得た新しい超撥水材料を開発したと、9月10日に発表した。水滴が付くことによる材料表面の汚れや腐食、菌の繁殖、凍結などが防げる。船底にフジツボなどの付着を防ぐことで、船舶の流動抵抗を減らし省エネ運行にもつながると期待される。
水滴をはじく超撥水材料はこれまでも使われてきた。その一つに植物のハスの葉の超撥水性に学んだものがあり、水滴をはじく凹凸の微細構造を模倣して人工的に再現してきた。
この凹凸構造は非常に微細なため外から強い力が加わると、表面構造が壊れ超撥水性が失われる耐久性状の弱点があり、実用化が進まなかった。
そこでNIMSは、全身を針で覆ったハリセンボンの表皮を解明し、それをヒントに材料開発を目指した。ハリセンボンの表皮はテトラポッド(消波ブロック)のように尖った剛直なトゲと、柔軟性にとんだ皮膚からできている。
この複合構造にならい、柔軟なシリコーン樹脂の分子と分子の間に、テトラポット状の無機材料の針を化学反応によって結合させた。表面を電子顕微鏡で見たところ、剛直な無機ナノ材料のトゲ構造が高密度で充填された構造になっていることが分かった。
表面のトゲ構造は、ナノレベルで密度を調整して超撥水性を作り出せる。実際に水滴を表面にたらした状態で高速度カメラで撮影すると、水滴は材料表面を全く濡らすことなくはじかれる様子が映し出された。
トゲ状構造体は三次元ネットワークを形成していることから、擦(す)る、捻(ひね)る、引っ掻(か)くなどの外力によって表面を損傷しても、そこから新たな凹凸構造が再生され、永続的に超撥水性を維持することが確かめられた。
この材料は無機ナノ材料と、既に実用化されている樹脂を混ぜて練り合わせるだけでできることから、これまで通りに樹脂成形や塗装への応用ができる。