液晶分子、100億分の1秒の高速で集団的に運動―光駆動型の高速新素子や分子ロボットの開発に期待:筑波大学ほか
(2019年9月13日発表)
筑波大学と東京大学の研究グループは9月13日、岡山大学、東京工業大学の研究者らと共同で、液晶中の分子が光の照射によって従来の想定よりも1万倍以上高速で集団運動することを初めて観測したと発表した。光で分子の集団の運動を瞬時に操ることを利用した光駆動素子や分子ロボットの開発などが期待されるという。
光を当てると分子の形が変化する現象を光異性化といい、光異性化による分子単独の運動についてはこれまで多くの知見が報告されている。しかし、光異性化に伴う分子集団の運動に関する観測例はなかった。
研究グループは今回、1兆分の1秒の時間分解能と原子空間分解能を併せ持つ超高速時間分解電子線回折法という観測手法を用い、液晶中のアゾベンゼン分子の運動を観測した。
光異性化を示すアゾベンゼンは分子単独では1兆分の1秒程度の速さで光異性化が生じるとされているが、集団での応答速度はそれよりもはるかに遅い100万分の1秒以下と考えられてきた。
観測実験の結果、液晶中のアゾベンゼン分子は、100億分の1秒の応答速度で集団的に運動する現象が初めて観測された。これは、液晶中において今まで考えられてきた分子の応答速度の1万倍以上に当たる。
また、光を当てたときにアゾベンゼン分子が光異性化で曲がる方向に揃うように集団的に変化した。これは、分子が非常に速く一方向に揃うという新しい機能を示している。
これらの知見によれば、これまでより1万倍以上高速な応答速度を持つ光駆動型の液晶素子の開発をはじめ、分子ロボットや人工組織のような分子機能集合体の開発への液晶の応用が期待されるとしている。