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マンガン酸化物の結晶で優れた巨大磁気抵抗を発見―室温下の比較的弱い磁場で電気が100倍流れ易くなる:横浜市立大学/東京大学/高エネルギー加速器研究機構

(2019年9月18日発表)

 横浜市立大学と東京大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の共同研究グループは9月18日、室温でかつ比較的弱い磁場で電気が100倍も流れ易くなる「巨大磁気抵抗」現象を示す物質を発見したと発表した。これまでに見出された巨大磁気抵抗物質に比べて実用性に優れることから、応用研究の加速が期待されるとしている。

 巨大磁気抵抗は、物質の電気抵抗率が磁場により大きく変化する現象。HDD(ハードデスクドライブ)の磁気ヘッドは、金属の強磁性層と非磁性層を積層して得られる巨大磁気抵抗を利用し、容量を飛躍的に増大させた。

 優れた巨大磁気抵抗効果を示す物質の探索研究はその後も続けられてきたが、これまでに発見された物質は、マイナス数十℃以下の低温でしか巨大磁気抵抗が観測されなかったり、超伝導磁石でしか発生しないような強い磁場が必要だったり、あるいは電気抵抗の変化が緩やかであったりし、実用性からは遠いものが多かった。

 研究グループは今回、マンガン(Mn)、酸素(O)、ネオジウム(Nd)、バリウム(Ba)から成るマンガン酸化物(NdBaMn2O6)の数ミリ角大の良質な単結晶体を作ることに成功した。この物質は2002年頃に発見されていたが、大きな単結晶が得られず、巨大磁気抵抗は詳しく調べられていなかった。

 大型単結晶を用いた今回の研究で、この物質を300K(27℃)くらいにすると電気の流れ易さが100倍変化することを発見した。また、この物質を磁場中に置くと、2テスラほどのところで同様の変化がより低い温度で起きることを見出した。

 これらの観測結果は、巨大磁気抵抗の発現温度、発現磁場、電気抵抗変化の急峻性のいずれについても、これまで見出された物質より優れていることを示している。物質中の元素やその比率を変えることによって性能をさらに高められる可能性があるため、今後の応用研究が期待されるという。