超短パルスレーザー加工プラットフォームを構築―レーザーによる高精細加工の最適条件を探索:産業技術総合研究所
(2019年9月24日発表)
(国)産業技術総合研究所9月24日、深紫外から近赤外にわたる幅広い波長域の超短パルスレーザーをレーザー加工に試用できる「プラットフォーム」を千葉県柏市にある産総研柏センター東京大学連携研究サイト内に構築したと発表した。
超短パルスレーザーによる最適な加工条件を探索、実証するのに活用でき、生体・医療材料をはじめ樹脂やガラスなど様々な材料の高精細加工の実現や、産業利用の促進が期待されるという。
レーザーのパルス幅を短くしていくと、レーザー光のエネルギーを熱に変えることなく直接的に材料の破壊や蒸発を起こすことができ、熱影響による材料の溶融やレーザー照射部近傍の意図せぬ変形、変質を避け、高精細な加工ができる。
また、波長を短くしていくと、多くの材料でレーザーの吸収の度合いが急激に強くなり、弱い照射強度でも加工できるとともに、レーザーの集光サイズを原理的に小さくできることから、より高精細な加工が可能になる。
産総研ではこうした調査・研究の成果や実績を踏まえ、高精細加工に対する企業のニーズへの対応を目指したプラットフォームの構築を進めていた。
今回構築したプラットフォームは、2種類のフェムト秒レーザーと2種類のナノ秒レーザーの計4種のレーザーシステムから成る。フェムト秒は1,000兆分の1秒で、レーザー光のパルス幅を表す。第1のフェムト秒レーザーは、可視域から深紫外域の4つの波長のレーザー光をパルス幅50~2,000フェムト秒の範囲で発生できる。
第2のフェムト秒レーザーは、波長800nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の光を波長1,100-2,300nmの近赤外光に変換し、パルス幅200フェムト秒の光として発生できる。ナノは10憶分の1を表し、第1のナノ秒レーザーは、波長355nm、パルス幅25ナノ秒のレーザーを発振、第2のナノ秒レーザーは波長266nm、パルス幅10ナノ秒のレーザーを発振する。
レーザー加工は一般に、機械加工のような熟練した職人技を必要としない加工法で、材料の種類や加工形状、切削・切断・穿孔などの加工の仕方などに応じて、波長、パルス幅、スポット径、照射強度などの加工パラメーターを適切に選べば、高精細加工を実現できる。
しかし、適切なパラメーターの探索やその最適化には複数のレーザー光源や波長変換システムなどが必要で、それらが備わっている環境はこれまでなかった。産総研では技術相談を随時受け入れ、産業利用を支援する。