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多収の新低アミロース水稲を開発―業務用米としての普及が期待される:農業・食品産業技術総合研究機構

(2019年10月8日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は10月8日、多収で、炊いた後に冷めても硬くなりにくい低アミロース水稲の新品種を開発したと発表した。“里を明るく照らす月のようになって欲しい”との願いを込め「さとのつき」と命名したという。倒れ難く、ウイルス病の縞葉枯病(しまはがれびょう)にも強い特徴があり業務用米としての普及が期待される。

 お米には、うるち米と、もち米がある。もち米にはブドウ糖分子1千個余りからできているアミロースがほとんど含まれず、うるち米ではこの含有量が少ないほど炊いたときに粘り気が強くなる特徴があることから、低アミロース米の新品種開発が求められている。

 近年は主食用うるち米の約4割が中食・外食などの業務用に販売され消費されている。こうした業務用では、品質保持の面から冷めても硬くなり難い低アミロース米が好まれ、農業研究センター(現、農研機構次世代作物開発研究センター)が開発したアミロース含有率が10%程度の低アミロース品種「ミルキークイーン」が東北地方から九州まで広く栽培され、さらにその改良版も登場してきている。

 しかし、事業者などからはより収穫量が多い低アミロース米の新品種開発が待ち望まれ、そのニーズに応えようと今回の研究を行った。

 新低アミロース米「さとのつき」は、革新的技術開発・緊急展開事業「業務用米等の生産コスト低減に向けた超多収系統の開発」として取り組んで育成したもので、アミロース含有率は約11%。一般米より7%ほど低い。「ミルキークイーン」由来の低アミロース系品種の「中系 d2837」と、耐倒伏性の強い「関東PL12」系、味の良い「中国178号」とを交配することにより得た。

 福山市(広島県)で行った栽培では、10a(アール、1aは100㎡)当たりの収穫量が659kgと既存の低アミロース品種「姫ごのみ」より1割程度多く、九州など西日本地域で広く栽培されている人気の一般米「ヒノヒカリ」より2割程度も多収であることを確認した。

 また、炊飯米は、外観が優れ、粘りが強く、柔らかい特徴を持っていて、混米にすると味が向上することが分かったという。

 農研機構は、西日本を中心とした地域への普及を目指したいとしており、既に中国地方で試作が始まっている。