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ミトコンドリアのたんぱく質搬入口の精密構造を解明―ミトコンドリア病の病因メカニズム解明などに貢献へ:京都産業大学/産業技術総合研究所ほか

(2019年10月11日発表)

 京都産業大学、(国)産業技術総合研究所、フライブルグ大学(ドイツ)などの共同研究グループは10月11日、細胞内小器官のミトコンドリアにたんぱく質を搬入する入口である「TOM複合体」の精密構造を解明し、たんぱく質搬入の仕組みを明らかにしたと発表した。ミトコンドリアが関わっている神経変性疾患やミトコンドリア病の対策などにつながる成果という。

 ミトコンドリアは酵母やヒトをはじめとした真核生物全般の細胞内にある小器官で、生命活動に必須のエネルギー生産を担い、生命体の健康に重要な役を果たしている。

 その機能維持には1,000種に及ぶたんぱく質が関わっており、外膜、内膜の2枚の生体膜に囲われたミトコンドリアは、これらたんぱく質の前駆体を外膜にある搬入口「TOM 複合体」を介して内部に取り込み、膜間部、内膜、その内側のマトリックスへと仕分けし、前駆体たんぱく質を成熟体に変えて機能させている。

 研究グループは今回、搬入口の「TOM複合体」の詳細な構造を調べ、その機能的な仕組みを解明した。

 「TOM複合体」はトランスロケーターと呼ばれる膜透過装置で、前駆体たんぱく質に書き込まれている宛先(行先シグナル)を読む受容体や、膜透過用の通り道として働くチャネル部などから構成されていることは知られている。しかし、たんぱく質のどのような集合から複合体は構成されているのか、前駆体たんぱく質をどのように効率よく外膜を透過させるのか、などは明らかでなかった。

 研究グループは、酵母のTOM複合体を精製し、試料を凍結して観察するクライオ電子顕微鏡を用い、3.8Å(オングストローム,1Åは1億分の1cm)の分解能で複合体の三次元構造をとらえ、構造決定した。

 それによると、全体は5種類のサブユニットから成る2量体で、たんぱく質の通り道となる2つの円筒形のチャネルが互いに30°傾いていること、チャネル内にはプレ配列を持つ前駆体たんぱく質と持たない前駆体たんぱく質それぞれに専用の通り道と出口が用意されていること、出口で待ち構える各輸送経路の下流の因子に前駆体たんぱく質を別々に受け渡すことで機能も性質も異なる1,000種に及ぶ前駆体たんぱく質の外膜透過を効率よく行っていること、などが明らかになった。

 これらの成果は、ミトコンドリアたんぱく質と関連するパーキンソン病などの神経変性疾患やミトコンドリア病の病因メカニズムの解明などへの貢献が期待されるという。