形状記憶効果を示すハイエントロピー合金を開発―形状回復温度の幅、これまでの合金より大幅に広がる:物質・材料研究機構
(2019年10月16日発表)
(国)物質・材料研究機構は10月16日、ソウル国立大学と共同で、形状記憶効果を示すハイエントロピー合金を開発したと発表した。従来のチタン・ニッケル製形状記憶合金よりも高温で使えるため、高温用アクチュエーターなど新たな応用が期待されるという。
ハイエントロピー合金は、5種類以上の元素をほぼ等量混ぜ合わせた合金。従来の合金は主に1種類の元素を主要元素とし、それに少量の異種元素を混ぜたものだが、ハイエントロピー合金は多元系でかつ各元素とも高濃度であり、これまでにない優れた特性や機能の発現が期待され、近年国際的に盛んに研究されている。
研究チームは今回、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルが20%ずつ混合したカンター合金と呼ばれる合金と、その周辺組成の合金、例えば5元素のうちコバルトとニッケルを計40%とし、両元素の比率をその間で変化させた合金などを熱力学的に検討し、これらの合金が温度変化により可逆的に相変態するハイエントロピー合金であること、これらの合金は変形後に加熱すると元の形状が回復する形状記憶効果を示すことを解明した。
これまでに形状記憶合金として知られているニッケル・チタン合金や、鉄・マンガン・シリコン合金などは、形状回復温度の範囲が限られているが、今回発見されたハイエントロピー合金は、合金組成を変えることで形状回復温度を低温から高温まで幅広く変えられる可能性がある。
また、クロム30%、マンガン10%、鉄20%、コバルト40%の合金では、ニッケル・チタン合金の場合373Kが上限である形状回復温度が700Kまで向上した。
今後、形状記憶効果に与える熱処理や加工組織の影響などを明らかにすることにより、さらに優れた特性の合金の開発とその応用展開が期待されるとしている。