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ガスボンベや吸蔵合金に代わる新水素キャリア材料浮上―ホウ化水素シートに光当てると常温常圧下で水素放出:東京工業大学/筑波大学ほか

(2019年10月24日発表)

 東京工業大学、筑波大学、高知工科大学、東京大学の共同研究グループは10月24日、ホウ素と水素から成る二次元物質のホウ化水素シートが、紫外光を当てると室温・大気圧下で水素を放出することを見出したと発表した。水素ガスボンベなどに代わる軽量で安全な水素キャリアとしての利用が期待されるという。

 ホウ化水素シートは、2年ほど前に共同研究グループが初めて合成に成功した通称ボロファンと呼ばれる物質で、2次元の6角形状の骨格を持つホウ素に水素が結合した構造をしている。質量水素密度は8.5%あり、同2%程度の水素吸蔵合金よりもかなり高い。常温常圧の非常に穏やかな条件下で合成でき、軽く、取り扱い上の安全性も高いといった特徴がある。

 このため、研究グループは安全で軽量なポータブル水素キャリアへの応用を目指して研究開発を推進し、今回、ホウ化水素シートに紫外光を照射する単純な操作で水素を穏やかに取り出せることを見出した。

 理論的な解析によると、紫外線エネルギーで電子を反結合性軌道に遷移させると水素の結合が弱められると示唆されたため、紫外線照射で水素が放出されるのではないかと考え、その検証を行った。

 その結果、可視光の照射はホウ素の結合性軌道から反結合性軌道への遷移を起こすことができるが、紫外線照射は水素の反結合性軌道への遷移を起こすことができ、理論計算の予想通り、紫外線の照射で水素が生成することを確認した。水素生成量を定量したところ、ホウ化水素シートの質量の8%に当たる水素の放出が認められた。

 水素社会の本格的な到来を控え、水素の安全な貯蔵・運搬技術の開発が課題になっているが、今回の研究成果を発展させれば、高圧ガスボンベや水素吸蔵合金など従来のキャリアに代わる、安全・軽量・簡便なポータブル水素キャリアの開発が期待されるとしている。