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気候変動で全国の砂浜のレクリエーション価値が減少する―携帯電話の位置情報データから、社会経済価値の損失を予測:国立環境研究所ほか

(2019年10月28日発表)

 (国)国立環境研究所と(国)海洋研究開発機構、甲南大学の研究チームは、気候変動によって減少が懸念されている全国の砂浜に関して、レクリエーション価値の減少率が大きくなるとの予測をまとめ、10月28日に発表した。来訪者の携帯電話から得られた位置情報のビッグデータを使い、社会経済的な価値の損失を新たに導き出した。これまで物理的な砂浜面積の減少は強調されていたが、レクリエーション価値の影響は見逃されており、警鐘(けいしょう)を鳴らしている。

 気候変動が、気温上昇や海面上昇など自然環境に与える影響は予想されてきた。ところが自然環境の変化が人の生活や福祉、レクリエーションなどにどう影響を与えるかという社会経済的価値は、ほとんど議論されてこなかった。自然による恵みは市場の金銭価値として評価され難いことから軽視されていた。

 研究チームは、環境省の「水浴場水質データ」に基づき全国536地点の砂浜(海水浴場)の中から、夏と冬のレクリエーション価値を推定した。

 来訪者の携帯電話から得られた位置情報ビッグデータを利用し、それぞれの砂浜の来訪者数と訪問者の居住地の情報を取得。そこで支払われた旅費を基に、レクリエーション価値を評価するトラベルコスト法を使って、夏季202地点、冬季72地点の価値を算出した。

 砂浜ごとのレクリエーション価値は、夏季は約4,800円から約3,613万円、冬季は約1,600円から約1,984万円と大きな幅があるものの、推計ができた。

 さらに海面上昇による砂浜消失が、レクリエーション価値をどう変えるかを予測したところ、砂浜面積の残る割合よりレクリエーション価値の割合の減少率が大きくなった。

 南日本の砂浜は北日本よりレクリエーション価値は高いが、沖縄、九州、四国、近畿地方で将来の価値を失う傾向が目立った。これに対して北日本の砂浜は一定の価値を保つ傾向にあった。

 今後、砂浜の保全対策でどこを優先するかの意思決定に際して、この推定が役立つとみている。