水に溶ける食物繊維ベータ・グルカンを多く含む大麦の新品種―「くすもち二条」の名で販売始まる:農業・食品産業技術総合研究機構
(2019年11月5日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は11月5日、開発した水に溶ける水溶性食物繊維ベータ・グルカンを多く含むもち性二条大麦の販売が企業から「くすもち二条」の名で始まったと発表した。別名もち麦と呼ばれるもち性大麦は、健康機能性の観点から近年消費が大幅に伸びており、農研機構は「くすもち二条」を11月20日から22日まで東京・有明(江東区)の東京ビッグサイトで開催される「アグリビジネス創出フェア2019」の農研機構ブースに展示して一般に紹介するとしている。
大麦は、世界で最も古い穀物と見られている。米のようにデンプン成分の違いから、うるち麦、もち麦があり、含まれるベータ・グルカンと呼ばれる水溶性食物繊維の機能が近年注目されている。
ベータ・グルカンは、グルコース(ブドウ糖)がつながってできている重合体のこと。大麦のベータ・グルカンには血中コレステロールを低減する効果のあることを米国など各国が認めており、我が国でも(公財)日本健康・栄養食品協会がコレステロールの正常化、食後血糖値の上昇抑制などの効果があるとする評価をホームページで紹介している。
こうしたことからベータ・グルカンを多く含むもち性大麦が機能性食品としてマスメディアなどで取り上げられるようになり、平成28年から需要が急増している。
しかし、国内で流通しているもち性大麦の多くは外国産というのが実状。中でも課題になっているのが大麦の主産地の一つである九州地方で作れるもち性大麦が無いということ。理由としては、九州地方の梅雨入りが他より早いことが挙げられている。
新品種「くすもち二条」は、その難問を解決したもので、梅雨入りの早い九州地域でも栽培できる。
二条というのは、麦の一つの穂に実が2列実る品種のこと。「くすもち二条」は、早生(わせ)の二条大麦「サチホゴールデン」と草丈の低いもち性大麦「羽系(はけい)B0571」とを交配することで得た。農研機構が過去に開発したうるちの二条大麦「ニシノホシ」よりベータ・グルカンを1.5倍も多く含むことを確認している。
既に福岡県を中心に約250ha(ヘクタール、1haは1万㎡)で栽培が行なわれている。