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老化や貧血を誘発する仕組み明らかに―SHMT2遺伝子の発現低下が重要な原因:筑波大学

(2019年11月8日発表)

 筑波大学生存ダイナミクス研究センターのグループは11月8日、老化に伴うエネルギーの欠乏や細胞分裂の低下などをもたらす仕組みを遺伝子破壊マウスを用いた実験で明らかにしたと発表した。SHMT2と名付けられた遺伝子の働きが失われると造血機能が奪われ、胎児貧血になることも明らかになったという。

 研究グループは「ヒトの老化に伴うエネルギーの欠乏は、SHMT2遺伝子の発現低下が重要な原因である」という仮説を立て、Shmt2を破壊したマウスを作って仮説の検証を試みた。

 SHMT2(Shmt2)は、アミノ酸の一種であるセリンをグリシンに変換する酵素をつくる遺伝子。Shmt2が正常なマウスの胎児では肝臓でグリシンが作られるが、Shmt2が破壊されたマウス胎児の肝臓ではグリシンが枯渇し、グリシンからギ酸を介して作られるタウリンとヌクレオチドの両物質が枯渇する。

 タウリンはエネルギーを生み出すミトコンドリア内のたんぱく質合成に必須のアミノ酸で、タウリンの枯渇はエネルギー欠乏をもたらす。エネルギーの欠乏は細胞分化遅延を誘発する。

 もう一つのヌクレオチドは核酸(DNAとRNA)の構成成分で、ヌクレオチド枯渇は核酸の枯渇をもたらし、核酸枯渇は細胞分裂遅延を誘発する。

 Shmt2が正常なら、細胞分化と細胞分裂で大量の血球が産出されるが、エネルギー欠乏で血球分化遅延が、また細胞分裂遅延で血球数不足が生じ、結果としてShmt2破壊マウスでは、胎児肝臓の85%を構成する造血細胞が枯渇し、胎児貧血が誘発されることが分かった。

 今回の研究でグリシンが作られないと胎児貧血が誘発されることが明らかになったことから、妊婦のグリシン摂取は胎児貧血を改善する可能性が浮上した。また、グリシンの枯渇によってエネルギーの欠乏や細胞分裂の遅延がもたらされることから、グリシン摂取は老化に関連したエネルギー欠乏や細胞の老化を改善する可能性も浮上した。

 一方で、SHMT2遺伝子の発現低下はがん細胞の分裂速度を抑制するというプラス面の報告もあるので、グリシン摂取のあり方などを含め今後きめ細かな検討が重要としている。