要介護高齢者向けに転倒しない自立支援歩行車を開発―転倒防止機構の有効性を検証し2021年初めに実用化へ:幸和製作所/産業技術総合研究所
(2019年12月9日発表)
(株)幸和製作所(本社堺市)と(国)産業技術総合研究所は12月9日、利用者の転倒を防止する機構を備えた要介護高齢者向け歩行車を開発したと発表した。転倒の初動を抑制することにより転倒するのを防ぐ仕組み。人型ダミーを用いた試験で転倒防止機構の有効性を検証した。2021年2月までに実用化を目指すという。
開発した歩行車は、転倒リスクのある要介護者が車椅子に腰かけて移動するのではなく、自立して歩いて移動することを支援する。寝たきりの増加が深刻な社会問題になっていることから、寝たきり要介護者の増加抑制を図る狙いがある。
これまでの歩行車は、利用者が歩行車から転倒したり、歩行車ごと転倒したりするというリスクがあり、利用が進んでいなかった。
共同研究グループは、歩行車に適切な転倒防止機能を持たせることを目指し、4つの課題の達成に取り組んだ。
1つは、歩行者ごと転倒しないような安全性を備え、かつ、要介護高齢者でも利用可能な操作性を持つ。第2は、トイレを含む狭隘(きょうあい)な生活空間でも利用できる。第3は、転倒リスクと介護負担とも、車椅子での移動と同程度以下であること。第4は、歩行中は介助なしで利用できること。
1、2については、小さな基底面でも転倒しないような重量を歩行車に持たせ、かつ小さな力で歩行車を操作できるようにし、課題を解決した。具体的には、利用者が歩行車に与える接触力とモーメントを解析し、最も不安定となる状態で歩行車の車輪が床を離脱するかどうかを評価し、歩行車の重量を設計した。操作性はパワーアシストにより実現した。
3、4については、初動を抑制する機構を開発し解決した。転倒は、利用者の重心の床の投影点が支持基底面の中心から境界へ偏ることに関係して発生する。これに着目して、この重心の偏りの初動を抑制する機構を開発した。
高齢者の体形や関節の動きなどを似せて作った人型ダミーを用い、初期位置や姿勢をいろいろ変えて転倒実験したところ、人型ダミーが歩行車から落下する例は一度もなかった。ただ、歩行者ごと転倒するリスクがゼロではなかったため、原因を解析し改良した。
研究グループはJISに基づく各種の安全性評価実験を進めるとともに、量産モデルを開発して実証実験を行い、2021年初めころの実用化を目指したいとしている。