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農業用パイプラインの漏水監視―低コスト・省力化へ新技術:農業・食品産業技術総合研究機構/東京大学

(2019年12月11日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構と東京大学は12月11日、農地に送配水する農業用パイプラインの漏水を監視する技術を開発したと発表した。漏水箇所と漏水量を簡単なバルブ操作とパイプ内の水圧測定だけで高精度に推定でき、パイプ内から水を抜くなどの大掛かりな作業は必要ないという。人手をあまりかけず低コストで漏水状況を把握できるため、パイプラインの定期的な機能診断などに役立つと期待している。

 新技術では、パイプラインの水の流れを調整するためのバルブを操作、水圧に特殊な圧力変動(圧力波)を発生させる。この圧力波が漏水している場所に進むと、反射波が発生する。この反射波を圧力計で精密に観測することで漏水の有無や位置、量を推定できる仕組みだ。圧力の低下量から漏水量を、圧力が低下するまでの時間から漏水位置を推定できるという。

 パイプラインの模型を用いた実験では漏水位置は0.2~1.0%の精度で、漏水量は最大で17%程度の誤差内で推定できた。さらに、漏水量が少ないと一般に正確な推定は難しいが、今回の実験では毎秒0.011ℓ(リットル)、漏水率では7.9%という少量の漏水でも検知できたとしている。圧力波を発生する際にあまりに急激な圧力上昇はパイプを痛める可能性があるが、水の流速をパイプの材料や内径などから理論的に計算できる値より小さくすることで安全な漏水調査が可能としている。

 農業用パイプラインは老朽化が進むと水漏れが生じて経済的な損失を生じさせるだけでなく、周辺地盤の陥没や斜面崩壊の原因ともなりかねない。そのため定期的な漏水診断が必要だが、農業用パイプラインの適した低コストで手間のかからない診断技術はこれまで十分ではなかった。

 新技術について、研究グループは「小規模な土地改良区でも容易に管水路(パイプライン)の定期的な機能診断を行うことが可能になる」と話している。また、将来的にはごみ詰まりや空気だまりなどの通水異常検知や水利用状況の監視もできる技術に発展させていきたいとしている。