建設残土中のヒ素の存在状態と溶出の仕組み明らかに―土壌に含まれる黄鉄鉱の表面に蓄積し局在:東京農工大学/国立環境研究所
(2019年12月16日発表)
東京農工大学と国立環境研究所、(国)産業技術総合研究所の共同研究グループは12月16日、土壌に含まれる有害元素のヒ素が黄鉄鉱(フランボイダルパイライト)に局在していることが明らかになったと発表した。自然由来のヒ素の蓄積や溶出のメカニズムも明らかになったことから、大量に発生する建設残土のより適切な管理や措置が期待されるとしている。
ヒ素は人体への毒性が強く、法令で規制の対象になっている元素。リニア新幹線などの大規模な公共工事によって大量に発生する建設残土には、しばしば自然由来のヒ素が含まれており、これまでに自然由来のヒ素を含む土から土壌溶出量基準を上回るヒ素が検出された例は多く報告されている。しかし、ヒ素が土壌に蓄積している仕組みやヒ素が土壌から溶出する機構はよく分かっていなかった。
研究グループは今回、兵庫県 播磨科学公園都市にある大型放射光施設SPring-8で得られる強力で指向性の高いX線を用い、自然由来汚染土に含まれるヒ素をX線吸収分光法により分析した。黄鉄鉱を含む土壌の薄片を作成し、これにX線を照射、ヒ素の分布状態などを調べた。
その結果、ヒ素は土壌中の黄鉄鉱に局在しており、ヒ酸や硫砒(りゅうひ)鉄鉱など複数の化学形態をとり、ラズベリーのような形をした黄鉄鉱の表面に蓄積していることが分かった。
黄鉄鉱は水にほとんど溶解しない。しかし、酸化剤である過酸化水素を加えると、その一部が溶解することが認められた。このことは、地下から掘削された自然由来汚染土が地上で大気に晒(さら)され酸化が進んだ場合、ヒ素の溶出が起こりうることを示している。
今回の研究により、土壌中におけるヒ素の存在状態やヒ素が土壌に蓄積する仕方が明らかになるとともに、土壌からヒ素が溶出する仕組みも明らかになったため、今後、建設残土の処理・処分のための技術開発や汚染のリスク管理に新知見が活用されることが期待されるとしている。