メガソーラー劣化防止に新技術―透明導電膜で太陽電池被覆:産業技術総合研究所
(2019年12月17日発表)
(国)産業技術総合研究所は12月17日、太陽電池本体に高電圧がかかるメガ(100万)ワット級の太陽光発電所「メガソーラー」で短期間に大幅な出力低下が起きる問題を回避できる技術を開発したと発表した。太陽電池の表面を透明導電膜で被覆するだけという簡単な手法で実現できるため、製造コストを上昇させることなく産業界への技術移転ができるという。
再生可能エネルギー利用の柱の1つである太陽光発電は世界的に大型化している。それに伴って送電時の電力損失を防ぐために1,500V(ボルト)程度のシステムが普及するなど高電圧化が進んでいる。ただ、高電圧化すると太陽電池本体の性能が数カ月から数年で大幅に劣化するという問題があった。
産総研はこの問題を解決するため、高電圧下での劣化が特定の条件の下である程度抑制されるという経験的に知られた事実に注目した。その条件は、①外部の機械的衝撃から守るために太陽電池を覆う樹脂(封止剤)の抵抗率が高い、②光の吸収率を上げるために表面を覆う反射防止膜に含まれるシリコン組成が多い、の2点だった。
産総研は、これらの条件を満たした場合には反射防止膜にかかる電界が小さくなり、結果的に劣化が抑制されていると推定。反射防止膜にかかる電界をより小さくすることで劣化が抑制できるかどうか、実証実験を試みた。
このため単結晶シリコン太陽電池の反射防止膜上に厚さ100nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の透明電極膜を形成したものと透明電極膜のないものを作製、それぞれ劣化具合がどう異なるかを比較した。温度85℃、相対湿度2%以下の環境下で2,000Vの電圧をかけて劣化具合を確認したところ、透明電極膜のない場合には24時間で出力が当初の10%程度にまで低下した。これに対し、透明電極で覆ったものは1週間の試験後も出力低下は見られなかったという。
産総研は今後、透明電極膜の膜厚を薄くした場合や、より安価な透明電極膜の形成技術を使った場合に、出力低下の防止効果がどのように変わるかなどを詳しく調べ、実用化を進めたいとしている。