地球温暖化によって中緯度での台風の移動速度遅くなる―日本への雨の影響、時間と量の相乗効果で作用へ:気象研究所ほか
(2020年1月8日発表)
気象研究所は1月8日、地球温暖化により、日本などが位置する中緯度を通過する台風の移動速度が遅くなることが分かったと発表した。これは日本が台風の影響を受ける時間が長くなることを意味している。温暖化によって降水強度の増加が予測されていることから、台風の影響は相乗効果で増大する可能性が予想されるとしている。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書等では、地球温暖化の進行とともに台風の最大風速や降水量が強まる可能性が示されている。しかし、移動速度については防災・減災の面で重要性が大きいにもかかわらず、これまでは深く検討されていなかった。
気象研は今回、多数の高解像度地球温暖化気候シミュレーション実験結果を取りまとめた『地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース』を利用して、台風の移動速度の将来変化を、地球の平均気温が今世紀末に「産業革命以降4℃上昇した状態」を想定し、定量的に評価した。
その結果、地球温暖化により、熱帯・亜熱帯域の台風の移動速度はあまり変わらないが、中緯度帯の台風の移動速度が約10%遅くなることが分かった。
これは、地球上で発生する全熱帯低気圧を対象とした検証でも、また、日本が位置する北西太平洋域の台風だけを対象とした検証でも同様の結果だった。
中緯度帯で台風の移動速度が遅くなる原因については、地球温暖化に伴い大規模な大気の流れが変化し、日本上空の偏西風が北上し、台風を移動させる台風周辺の風が中緯度帯で弱くなることによると考えられるという。対流圏中層の500hPa(ヘクトパスカル)高度の風速の予測実験結果から、それを裏付けるデータが得られている。
今後は大学、研究機関等と連携して、気候変動がもたらす将来の台風リスクをより定量的に評価できるよう、詳細な解析を行っていく予定という。