植物の環境ストレス応答に手がかり―遺伝子調節の仕組み解明へ:筑波大学
(2020年1月10日発表)
筑波大学は1月10日、植物が温度変化や養分不足などの環境ストレスに対応する仕組みの一端を解明したと発表した。環境ストレスへの対応に必要なたんぱく質を合成する酵素が持っている植物固有の部位「PHDフィンガー」が、遺伝子の働きを調節するカギを握っていることを突き止めた。環境ストレスにさらされた植物の遺伝子調節に関わるメカニズムの解明につながると期待している。
筑波大学生命環境系の三浦謙治教授、寿崎拓哉准教授らの研究グループが、アブラナ科の植物で研究用に広く使われているシロイヌナズナを用いて明らかにした。
環境ストレスにさらされた植物は自らのたんぱく質の化学構造の一部を変えて対応するが、この反応「SUMO化」に欠かせないのがSIZ1と呼ばれる酵素。植物のSIZ1にはPHDフィンガーと呼ばれる植物固有の部位があるが、その役割についてはこれまで未解明だった。
そこで研究グループは、その役割を解明するためPHDフィンガーのないSIZ1酵素や構造の一部を変化させたSIZ1酵素を作製、シロイヌナズナに導入して詳しく解析した。その結果、PHDフィンガーがトリメチル化されたヒストンH3(染色体を構成するたんぱく質)を特異的に認識していることなどが明らかになった。
これらの結果から、PHDフィンガーを持つSIZ1酵素は植物が環境ストレスに対応するための遺伝子の働きを調節する上で重要な役割を担っていることが示唆された、と研究グループはみている。