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目に見えぬ光でも光合成―シアノバクテリアの秘密を解明:東京理科大学/岡山大学/筑波大学ほか

(2020年1月15 日発表)

 東京理科大学、(国)理化学研究所など4大学1機関の研究グループは1月15日、原始的な藻類であるシアノバクテリアが可視光より小さいエネルギーしか持たない遠赤色光でも光合成できる秘密を解明したと発表した。シアノバクテリアで発見された葉緑素「クロロフィルf」が遠赤色光のエネルギーを他の色素に渡し光合成していることが分かった。人工光合成の開発などに応用すれば、将来の安定的なエネルギー供給にもつながるという。

 東京理科大の鞆達也(とも たつや)教授と理研、岡山大学、筑波大学、神戸大学の共同研究グループが解明した。

 光合成は植物や植物プランクトン、藻類などが光エネルギーを吸収して水と二酸化炭素から有機物を合成する化学反応。光合成には一定以上のエネルギーを持つ光が必要で、エネルギーの小さい長波長の光では光合成は起きないとされていたが、2010年にシアノバクテリアから波長700~800nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の遠赤色光を吸収して光合成をするクロロフィルfが発見された。

 そこで研究グループは、その役割の解明に着手した。まず、培養したシアノバクテリアが遠赤色光より高いエネルギーの光を含む白色光で培養した場合よりもクロロフィルfを多く作っていることに注目。この色素が光化学反応で果たしている働きの解明に取り組んだ。その結果、クロロフィルfは光化学反応を直接的に進めているのではなく、その機能を持つ別の色素にエネルギーを受け渡すことで光化学反応を促進する手助けをしていることなどが分かった。

 鞆教授は「多くの植物は光化学反応のエネルギー源として可視光しか利用できないが、より低エネルギーの光の利用を可能にする機構が明らかになった」と話している。